レンブラント『夜警』【和田彩花の「乙女の絵画案内」】
2013年12月06日 公開 2015年04月24日 更新
人間の光と闇を描く
私は、レンブラントは肖像画に物語やリアルをもちこみたかったんじゃないかなと思います。実際の日常は、1列に並んだ記念写真のようなものではないんだ、ということを描きたかったのです。
あくまでも私の勝手な妄想ですが、昔の偉い人たちは周囲からちょっと憎まれたり、疎まれたりしているイメージがあります。
もしかしたら、そんな組合員の日常の不満のようなものを見抜いたレンブラントが、あえて地位のある2人を目立たせたんじゃないのかな、なんて想像しちゃいます。
お芝居などでも、闇のなかで突然スポットライトが当たるのは、善人とはかぎりませんよね。むしろ悪人にスポットライトが当てられることも多い。
人間関係の光と影さえも、レンブラントは絵に描こうとしたのではないでしょうか。それを、絵画技法として光と影を強調することで、浮き彫りにしている。そういった企みがあるからこそ、この絵を一般的な集団肖像画にしなかったんだ! それが、私の勝手な推理です。
光と闇を描くことに卓越した才能をもった画家だからこそ、そう思えてくるのかもしれません。
でも、やっぱり表情をちゃんと描いてもらえなかったうしろの人たちは、この絵を観たらちょっとショックですよね。何があったんだろう? と私なら思ってしまう。これがもし、CDのジャケット写真だったら大変です。
当時の集団肖像画といえば、学校の卒業アルバムの集合写真みたいに並んでいたものを、レンブラントが変えてしまった。
なぜそうしたんだろう? この絵にどんな謎を仕込んだのだろう?
ほんとうのところは、レンブラントにしかわかりません。
でも、人が生きていく道には光と闇がある、ということが、レンブラントの絵を観るたびに心に浮かんできます。光があるからこそ闇があって、闇があるからこそ光があるんですよね。
画家の宿命
この絵に描かれた人物1人ひとりを観察していると、いつまで観ていても飽きません。
レンブラントも、この絵を依頼されてから、それぞれの組合員をたくさん観察したのだと思います。
みんなの性格まで把握したうえで、きっと動きのある集団肖像画にチャレンジしたのでしょう。
絵画に夢中になりはじめた当初は、物語を自分のなかで勝手につくって楽しんでいました。
でも最近は、絵を理解するキーポイントや意味が知識としてわかるようになり、絵の楽しみがさらに増えました。
知識と想像。どちらの力もつけばつくほど絵を観ることが楽しくなっていきます。
いつか、アムステルダムにあるレンブラントのアトリエを訪ねてみたいです。
画家がいたその場に立ってみることで、きっと『夜警』をはじめとしたレンブラントの作品に対する気持ちも、大きく変わると思うんです。
いままで気づかなかった発見もできるかもしれません。
レンブラント自身も、人生の光と闇をたくさん見てきたのでしょう。画家の宿命ですよね。そんな自分の体験を、1枚の絵に織り込んでいく。
まだ10代の私には、わからないこと、知らないことがたくさんあります。
年齢を重ねていったとき、私はレンブラントの絵をどんなふうに観るのでしょうか。
絵画を観るという行為は、私の人生にとってなくてはならないものなのです。
<著者紹介>
1994年8月1日生/A型/群馬県出身
ハロー!プロジェクトのグループ「スマイレージ」のリーダー。
2009年、スマイレージの結成メンバーに選ばれ、2010年5月『夢見る 15歳』でメジャーデビュー。同年の「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。近年では、SATOYAMA movementより誕生した鞘師里保(モーニング娘。)との音楽ユニット「ピーベリー」としても活動中。高校1年生のころから西洋絵画に興味をもちはじめ、その後、専門的にも学んでいる。