「組織の盛衰」を決める企業遺伝子の継承
2013年12月18日 公開 2024年12月16日 更新
HRインスティチュート会長の野口吉昭氏は、「時代の変化とともに、革新を続けなければ企業は生き残れない」と語る。これからの企業はいかに次の世代へと価値を継承し、革新を進めるべきか。実際の企業を例に論考する。
※本稿は、野口吉昭著『企業遺伝子の継承 3つの革新が「組織の盛衰」を決める』(PHP研究所)より、内容を一部を抜粋・編集したものです。
「価値」をいかに継承するか
そもそも企業の存在価値とは、「市場価値の創造」である。いかにこれまでの、そして、これからのお客様に自分たちの商品やサービスを通して「喜んでいただけるか?」「満足していただけるか?」が存在意義であり、企業の原点である。
市場が変われば提供すべき商品もサービスも変える必要がある。もちろん、400年続く同じ商品の価値が、今も、これからも受け入れられるなら、いかに伝統を守り続けるかの話になる。
伝統を100年、200年守ることは簡単ではない。少しの革新の積み重ねが、伝統の真の継承になる。市場や人々の考えというものは、立ち止まることはない。変化は、必ず起こる。その変化の中で「同じ価値を享受できているか」を意識していかに乗り切るか?
乗り切るには、大きいか小さいかは別にして「革新」が不可欠なのである。
本書のテーマは、「企業遺伝子の継承」である。それは、不易流行から考えた継承だ。企業遺伝子をそのまま継承するのではなく、企業遺伝子に求められている「価値」をいかに継承するかが鍵だ。
同じ企業遺伝子をそのまま継承しても実は、真に求められる価値にはつながっていかない。工夫しないと真の価値は伝わらない。市場も変われば、組織も変わる。人も変わるのだから。
企業遺伝子の継承の肝は、次に掲げる2軸である。
「事業推進の革新」=仕掛け軸
「組織システムの革新」=仕組み軸
事業推進の革新は、既存事業・新規事業の事業自体をいかに革新し続けるかという切り口であり、組織システムの革新は、組織構造・人事システム・ITシステム・顧客満足向上システムなどの事業を支えるマネジメント・システムをいかに革新し続けるかの切り口のことである。
そして、次にくるのがこれらの2軸を支える、
「人づくり」
である。2つの軸による革新は、人づくりで統合されシナジーを起こす。革新を起こすのは、組織ではない。結局は、ある1人が起こす「個の革新」からなのだ。
特徴がない企業の寿命は短い
1997年に日本経済新聞社から『遺伝子経営』という本を出させていただいた。企業遺伝子の存在の共有化と企業遺伝子の重要性を訴えたかったからだ。企業遺伝子のマネジメントによって、企業の寿命は変わることを主張したかったのだ。
その後も『企業遺伝子』(PHP研究所)、『「ウェイ」のある強い経営』(かんき出版)、『人をあきらめない組織』(日本能率協会マネジメントセンター)などの企業遺伝子に関わる本を書いてきた。
そこで一貫して述べているのが、企業には、その企業らしい「優れた特徴」がなければならないということだ。特徴がない企業の寿命は短い。そして、やがて優れた特徴のない企業は滅んでいく。
その優れた特徴というのが、企業遺伝子だ。
企業遺伝子とは、企業の寿命を規定する価値基準と定義している。言葉であり、仕掛けであり、仕組みである。企業遺伝子には、大きく3つの階層がある。
ビジョン遺伝子=企業のミッション・ビジョンに関わるその企業特有の価値基準。企業理念・企業ビジョンなどが典型
スキル遺伝子=企業の戦略・計画に関わるその企業特有の価値基準。事業戦略・中期経営計画・事業計画などが典型
スタイル遺伝子=企業の現場の管理・業務に関わる企業特有の価値基準。マネジメントスタイル・社内ルール・行動様式などが典型