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日本の雇用流動化を促す「インターネット的な会社」とは? サイボウズ人事の提言

髙木一史(サイボウズ人事部)

2022年07月29日 公開 2024年12月16日 更新

働き方改革が声高に叫ばれる昨今、人事制度改革は企業にとって急務と言えるだろう。モチベーションや雇用、人材育成の面で「会社依存」に陥る日本社会を、これからどう変えていくべきか。

サイボウズ人事部の髙木一史氏は、労働者の多様性を認め、情報共有を徹底した「インターネット的な会社」をつくることができれば、いまの日本社会の構造とも適合する形で、変革を進められるのではないかと語る。

※本稿は、髙木一史著『拝啓人事部長殿』(ライツ社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

1つの会社で、1つの家庭を守る必要はない

長い間、日本企業は社会保障的な役割も担ってきました。「お父さんが一家の大黒柱として家族全員を養う」ために必要なだけのお金を企業の年功賃金で賄ってきたのです。

しかしいまの時代、かならずしも成人男性が1人で家族を養っていく、という家族観は当たり前ではなくなっています。総務省統計局の労働力調査によれば、2000年ごろを境にして、共働き世帯の数は専業主婦世帯の数を上回り、いまではその差はさらに大きなものとなっています。1人の男性が妻と子どもを養っていくというモデルは、社会全体から見ても少数派なのです。

夫婦ともに「無限の忠誠」から外れ、時間や場所・職務といった条件を限定して働ける選択肢を選ぶことができれば、それに合わせて互いの給与が低くなったとしても、ダブルインカムという形で家庭生活を維持していく、というモデルは可能ではないでしょう。 

実際、サイボウズで社内結婚しているメンバーのなかには、どちらもが時間や場所・職務を限定した状態で働きながら生計を立てている人がいますし、またサイボウズ以外の企業で副業をしながら収入を稼いでいる人もいます。

1社から1人に対する金銭報酬だけで家庭生活を営んでいく、という以外の選択肢をもっと当たり前にしていくことはできないでしょうか。

またこうしたモデルも、本人のスキルの向上やライフステージ・価値観の変化にともなって柔軟に変化させることができ(会社と個人がマッチすればという話ですが)、一度階段をおりて、ライフステージが変わったところで再びのぼりはじめる、ということも可能にしていけると、なおいいかもしれません。

階段をのぼったり、おりたり、あるいは、踊り場で仕事を分け合ったりしていくこと、そして、そのようなしくみを1つの会社だけでなく、いろんな会社で選べるようにすることで、社会全体でミスマッチを減らし、仕事と家庭生活を両立させていく。そんな未来を想像することはむずかしいでしょうか。

もちろん、職務や時間・場所といった条件を限定した働き方の人が増えていくことになれば、自然と社会保障のあり方も見直していく必要が出てくると思います。しかし、まずは会社が社内に多様な選択肢を増やしていくことこそが、漸進的で現実的な変革につながっていくのではないでしょうか。

 

会社と会社のあいだにデジタルの橋をかけよう

ここで忘れてはならないのは、そもそも日本社会には歴史的な背景も相まって企業を横断した基準が十分にできておらず、特に大企業を中心として、外部労働市場が十分に発達していない、ということです。

職務を限定して働ける選択肢ができたとしても、社内にその職務がなくなる、あるいはキャリアアップして給与を上げていきたいのに社内にその職務(ポスト)が空いていない、という状況になったときは、ほかの会社に転職していくことが必要になります。

しかし、その際に企業を横断した基準のない日本社会には依然として高いハードルがあります。

しかしこれも、1社だけで取り組んでいくのではなく、たくさんの会社がそうしたキャリアの選択肢を社内につくっていけば、徐々に外部労働市場が形成されてくるのではないでしょう()

また、転職はもはや、かならずしもゼロヒャクである必要はありません。

実際にサイボウズでは、社内で「やるべきこと」「やりたいこと」「できること」がマッチしなくなってきた場合に、徐々にサイボウズでのコミットメントを減らし、他社での副業割合を増やしていくことでその副業先の企業に転職していく、という事例が存在しています。

サイボウズに長年フルコミットで勤めていた人がコミットの割合を減らし、サイボウズで培った経験・スキルを空いた時間を使って他社で発揮しているケースもあります。

サイボウズの営業部長の1人は、サイボウズの業務割合を4割ほど減らしたそうです。業務の内容も変更、雇用契約を結び直し、その分を副業の時間に充てることで、現在5社との業務委託契約を結んで、主にアドバイザーの仕事をしています。収入も以前より上がったそうです。

また最近では、もともと週5で働いていた人が副業で起業し、週4日、週3日と徐々にサイボウズでの勤務割合を減らし、最終的に完全に独立するというケースも出てきました。

このように、仕事の仕方、時間の使い方でグラデーションをつくることができるようになれば、マッチングの機会がいまよりもずっと増え、安全に会社間を移動しやすくなることはないでしょうか。

さらに、特にPCを使うホワイトカラーの仕事の場合、デジタルツールが普及したことによって、会社間を超えて仕事を受けるハードルが低くなってきています。

ユニリーバやヤフーを取材したときにも、働く場所の制限がなくなったことによって、よりいろんな人に副業として仕事をお願いしやすくなってきたという話がありました。

会社と会社の間にデジタルの橋をかけることで、仕事が受けやすくなり、安全な形で会社間を移動していくことが可能になっていくことは考えられないでしょうか。

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情報共有のコストを下げ、教育の機会を増やす

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