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「組織の盛衰」を決める企業遺伝子の継承

野口吉昭(HRインスティテュート会長)

2013年12月18日 公開 2022年12月28日 更新

トヨタ・ホンダ・花王の企業遺伝子

少し具体的に説明していこう。

次の図表を見ていただきたい。ホンダ、トヨタ、花王の企業遺伝子を分類したピラミッドだ。これらは、企業理念の一部だったり、創業者の想いや声、現場で使われる言葉(ウェイ)を整理したものだ。あくまで、私が、勝手に整理体系化したものである。

・ホンダの企業遺伝子(Honda Philosophyなどを基本に作成)

【ビジョン遺伝子】
「The Power of Dreams」「夢を原動力に」「新たな感動と喜びをあなたに」「人間尊重」「3つの喜び=買う喜び・売る喜び・創る喜び」

【スキル遺伝子】
「理念なき技術は凶器。技術なき理念は無価値!」「研究所は、技術を研究するところではない。人間を研究するところだ」「らしさ・ならでは・ユニークなことをやれ!」「自主自立!」「3現主義!」「世界初!」「世界No.1!」

【スタイル遺伝子】
「2階に上げて梯子をはずして火をつける!」「褒められたヤツはやがて辞めて行く!」「限界突破!」「破天荒!」「無理難題!」「自分で考えろ!」「ワイガヤ!」「山ごもり!」

 

・トヨタの企業遺伝子(トヨタウェイなどを基本に作成)

【ビジョン遺伝子】
「発明家は研究をしてお国に尽くす。商人はカネ儲けしてそれを助け、そして国に尽くせ!」「あくまでオレは大衆車にこだわる!」「世界最適生産と世界最適調達体制の確立~グローバルビジョン」「トヨタウェイ/知恵と改善・人間性尊重」

【スキル遺伝子】
「研究と想像に心を致し、常に時流に先んずべし」「現場・現地・現物を重視した『3現主義』」「カイゼン」「無借金経営」「トヨタ自販文化基盤」「販売の神様~神谷正太郎イズム」「TPS」「勝つカイゼン 負けないカイゼン」「カンバン方式とはぴ~んと張った糸」

【スタイル遺伝子】
「愚直!」「なぜ?を5回繰り返す!」「見える化」「残すべきこと・捨てるべきことを明確に!」「自働化」「イノベーションは現状否定から!」「暗黙知はどこまでも暗黙知!」「方法論ではなく精神論が重要!」「管理ではない監督だ!」「口伝しろ!」「1人が1人、2人、3人...に伝えろ!」「自主研」

 

・花王の企業遺伝子(花王ウェイなどを基本に作成)

【ビジョン遺伝子】
「豊かな生活文化の実現」「消費者、顧客を最もよく知る企業」「絶えざる革新」「サステナビリティヘの貢献」

【スキル遺伝子】
「教えあい、学びあう(技術の連鎖)」「使場に聞く」(使場〈しじょう〉=生活の場の意味)「現状不満足の精神」「よきモノづくり」「グローバル視点」「価値ある商品とブランド」

【スタイル遺伝子】
「正道を歩む」「消費者起点」「現場主義」「個の尊重とチームワーク」「見えない声を形に変える商品化技術」「改善の継続によるコスト低減活動」「人手を積極的に活用する柔軟な製造技術」

トヨタウェイで語られる「知恵と改善・人間性尊重」、ホンダの創業者の想いでもある「夢」、そして企業理念にある「人間尊重」「3つの喜び」、花王ウェイにある「消費者、顧客を最もよく知る企業」などは、ぱつと聞いただけでもトヨタ、ホンダ、花王を想起できる。

しかも、各社の事業推進の革新や組織システムの革新という企業遺伝子の革新も感じ取れる。

トヨタの事業推進の革新は、業界ビジョンの変革でもあるハイブリッド車「プリウス」の存在であり、組織システムの革新は、現場の改善魂のシステム化であるTPS(トヨタ・プロダクション・システム)の存在に投影されている。

最近では、「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」という活動も推進され、もっとカッコよくて、安くて品質のよいクルマを、「もっといいクルマをつくろうよ」の掛け声とともに開発中である。

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著者紹介

野口吉昭(のぐち・よしあき)

株式会社HRインスティテュート代表取締役会長

横浜国立大学工学部大学院工学研究科修了。現在、株式会社HRインスティテュート(HRInstitute)の代表取締役会長。中京大学経済学部・総合政策学部講師。FMヨコハマで「YokohamaSocialCafe」のDJも務める。
主な著書・監修書に、『遺伝子経営』(日本経済新聞社)、『チームリーダーに必要なたった1つの力』(かんき出版)、『「ありがとう」が人と会社を幸せにする』(マガジンハウス)、『コンサルタントの「質問力」』『30ポイントで身につく!「ロジカルシンキング」の技術』(以上、PHP研究所)など多数。

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