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<尖閣問題・日本の一手>国際提訴がもたらす6つの効果

古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

2014年09月19日 公開 2022年07月08日 更新

迫りくる「米中新冷戦」』より》

尖閣問題で日本が劣勢を跳ね返す“タブー”の一手
(2014年6月18日発信)

 

尖閣諸島周辺は一触即発の状態

尖閣問題について日本の発想の転換を促す米国側からの提案を紹介しよう――。

沖縄県の尖閣諸島に対する中国の攻勢がまた一段と荒っぽくなってきた。毎週のように日本領海に中国艦船が侵入し、中国軍戦闘機が自衛隊機に異常接近するなど、もはや一触即発とも言える状態である。中国は尖閣奪取に向けた軍事態勢をますます強めているようなのだ。

中国政府による反日外交プロパガンダもとどまるところを知らない。「日本は釣魚島(尖閣諸島)を中国から盗み、戦後の国際秩序を変えようとしている」といった日本誹謗の政治宣伝を強化している。

こうした軍事、政治の両面でのせめぎ合いは、中国が優位に立っている。しかもこのせめぎ合いが実際の軍事衝突につながる危険性も高い。このままだと日本は中国の我が物顔の領海侵犯によって尖閣の施政権さえ骨抜きにされそうである。もしそうなれば、日米安全保障条約が適用され、米軍の防衛義務が発生するのは日本の施政権下にある領域だけだから、日米同盟の軍事効用も空洞化されてしまう。

そんな尖閣諸島の危機に対し、日本はどうすればよいのか。

いまのところの最大の頼みの綱は米国である。もし中国軍が尖閣に攻撃をかけてくれば、日米安保条約第5条の発動により米軍がその防衛のために出動することになっている。その場合、日本の自衛隊ももちろん防衛に当たらねばならない。

だが、アメリカが中国との全面戦争の危険を冒してまで、尖閣防衛のために対中軍事行動を起こすかというと疑問が残る。オバマ政権はなにしろ中国に友好の手を差し伸べることに熱心なのだ。尖閣周辺に米軍の海軍艦艇や空軍機が出動して、日本支援の軍事意図を誇示することはとても期待できない。その気さえあれば簡単にできる抑止力明示の行動さえも取らないのだ。そんなアメリカが中国軍を相手に実際の戦闘ができるだろうか。

 

「国際司法裁判所に提訴せよ」

そうした状況下で、アメリカの専門家から興味ある提案が示された。日本政府は尖閣の領有権問題を国際司法裁判所(ICJ)に提訴して、その裁定を仰ぐべきだ、というのである。

提案者は、アメリカ議会調査局のアジア専門官を30年以上務め、現在はワシントンの大手シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の上級研究員であるラリー・ニクシュ氏だ。

ニクシュ氏は朝鮮半島の研究でも知られるが、尖閣問題にも長年取り組み、多くの研究成果を発表してきた。同氏の研究や調査は、尖閣の領有権に関する日本側の正当性を暗に認めることが多かった。だから今度の提案の内容も、日本側は真剣に検討すべきだろう。

ただし、尖閣の領有権帰属を国際裁定に委ねるという案は日本側では一種のタブーである。日本政府の主張に反するのだ。なぜなら日本政府は、尖閣が古くから日本固有の領土であり、領有権は日本側にあり領土紛争はない、という立場を一貫してとってきたからだ。国際機関への訴えや裁定の求めはあり得ないのだ。

日本が国際司法裁判所の裁定を仰ぐという行動は従来の主張を捨て去ることになってしまう。日本政府はそういう考え方から国際司法機関への提訴には明確に反対してきた。

しかしニクシュ氏は、それでもなお国際司法裁判所への提訴は日本側に有利な結果をもたらす、と強調する。それどころか、現状がこのまま続けば、日本側がじりじりと後退して不利な立場に追いこまれるという。

そしてなによりも、現状の継続は日中両国の軍事衝突、つまり戦争に発展する危険性が高いと警告する。そのうえで国際提訴は日本の立場を大幅に有利にすると説くのである。

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国際提訴がもたらす6つの効果

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