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「婚活なき結婚」はありえない時代

白川桃子(ジャーナリスト/ライター)

2011年05月23日 公開 2022年08月22日 更新

年収600万以上が条件!?

 そして、いまの男女の結婚を大きく妨げているもの――それは経済的な問題です。

 独身男性の年収を調査したところ、年収400万円未満の人が8割でした。しかし女性は、じつは結婚相手に「年収600万円以上」を望んでいるというアンケート結果があるのです。

 男性の年収400万円でも、女性が200万円ほど稼げば、年収600万円になります。しかし、「出産=退職」が7割という日本では、女性が働き続けることは容易ではありません。

 そのなかで現代の男性たちは、「結婚して妻子を養っていく自信がない」と結婚そのものにためらいを感じ、できるだけ先延ばしにしようとします。また8~9割の男性が「結婚後も妻には働いてほしい」という。女性のほうは「一刻も早く経済的に安定した結婚をしたい」と望むのですが、それをかなえてくれる男性は、ごくひと握りなのです。

 いま婚活市場は、少数の安定した企業に勤める男性をめぐって、多くの女性が争う、シビアな市場です。といっても、かつての3高(高学歴、高収入、高身長)は人気がなく、「安定」「信頼できる(浮気しない)」「一緒にいて楽」な人を、女性たちは求めています。

 さらにいま、意外なほど「専業主婦」になりたい女性が増えている。アンケートでは、全体の3割ほどの女性が専業主婦志望。ただ、「実際になれると思う」人は6%。かつて誰もがなれた専業主婦は、いまや憧れの的です。

 つまり、女性たちの意識は昔もいまもそれほど変わっていない。「結婚したら男性の収入がメイン」という気持ちは母親世代と同じなのです。キャリアウーマンに憧れたのはバブル世代のみ。その後の厳しい不況と就職氷河期で、女性たちの働く意欲はすっかり減退しています。

 このような「専業主婦になりたい。お料理が得意なんです」という女性たちを、男性は「重い。背負いきれない」と感じてしまう。「子育て中は家にいたい」という、かつては「当たり前」だったことを望めば望むほど、結婚対象となる男性は少なくなる――。

 私は、結婚したかったら年収100万円でも200万円でも働き続けましょう、と女性たちに呼びかけるのですが、「子育てと仕事の両立は苦しい」という先入観で、ほとんどの方がガチガチです。

「子育てのあいだ、養ってくれるだけの安定収入があって、引っ張ってくれる人」という男性と出会う確率は、本当に少ない。現在の「婚活をしても結婚ができない」状況の理由は、「養ってほしい女性たちの数に対し、養える、養う気のある男性の数が少ない」という単純な数の問題です。「男は女を養ってくれるもの」という「昭和結婚」から脱却しないと、女性は結婚できないまま年を重ねることになってしまいます。

 ここで親世代は、「一緒に苦労するのが結婚」とお説教をしがちです。しかしそれは、日本経済が右肩上がりで、誰もが同じような幸せを手に入れられる希望があった時代だからこそできたこと。もしいまのご主人が、最初から「君も働いてくれないと、僕は養えないよ」といっていたら、あなたは彼を魅力的に感じましたか?「一家の大黒柱」だからこそ、いろいろと言いたいことも我慢してきたのでは……。

 現代の女性たちは、このような母親の姿をみて、「男が養ってくれない結婚なんて価値がない」と思っているのかもしれません。男性に「一家を養う甲斐性」がなくなったいま、求められるのはそれに代わる結婚の魅力ですが、多くの女性はまだそれを見出せていません。「甲斐性のない男と結婚するぐらいなら、独身でもいい。だからこそ、手に職をつけたんです」という20代の薬剤師さんに会ったこともありますが、いま若い世代ほど選別が厳しくなっているようです。

 また年収は妥協できても、「引っ張ってくれる男性」という条件こそが、結婚を妨げているともいえます。

「女の子とつき合っても、お金がかかるし気も使うし、めんどうくさい」

 これは20代男子の言葉です。

 いまの男子たちには「恋愛」よりも楽しいことがたくさんあります。女子のようにインテリアに凝ったり、趣味に走ったり……。またAKB48やアニメのキャラクターなど、都合のよい疑似恋愛の相手となら、傷つくこともない。薄ガラスのような神経の男子たちにとって、現実の恋愛はハードルが高いのです。

 20代の恋人がいる女性に聞いたところ、ほとんどが「私から告白しました。だって待っていたら何も起こらないから」といいます。こういう勇気ある「肉食女子」はいいのですが、アンケートによると、7割の女子が「待ち受け女子」、つまり、恋愛は相手からのアプローチを待つ状態。「草食男子」と「待ち受け女子」とでは、恋愛の起こりようがありません。

 新成人調査では、10人に7人は恋人がいません。日本の独身者の特徴は「恋愛していないこと」なのです。しかし、お見合い文化が廃れたいま、恋愛しないで結婚できる確率はゼロ%。「恋愛低体温」な男女が増えることこそ、結婚が少なくなるいちばんの原因かもしれません。

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親世代は意識改革を!

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