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仕事

部下の何をほめればいいのか――「辞めさせない」マネジメント

石田淳(社団法人行動科学マネジメント研究所所長)

2015年08月21日 公開 2024年12月16日 更新

《PHPビジネス新書『「辞めさせない」マネジメント』より》

 

部下を伸ばす「ほめ方」とは

 

「ほめられる」ことは、部下にとっての「成功体験」

 優秀な営業マンは、「お客様に商品を買ってもらった」という成功体験を、仕事のキャリアにおける割と早い時期に体験している人が多いようです。

 「買ってもらえた! うれしい!」という達成感がさらに、「自分にはできるんだ」という自信=自己効力感(セルフエフィカシー)を引き出し、「自分はもっとできるはず」と、次の努力へと向かわせるのです。

 そして、努力によって得た成果が、また達成感と自己効力感を引き出し、さらに次の努力へと向かわせる……。

 いわば「成功のスパイラル」に入るのです。

 一方、なかなかパフォーマンスを上げられない営業マンは、「お客様に買ってもらえなかった」「お客様に怒鳴られた」「上司に怒られた」といったネガティブな体験を引きずり、お客様へアプローチすることさえ躊躇します。

 「できれば、お客様と接するのは嫌なんだけど……」

 こんな人がパフォーマンスを上げられるわけはないでしょう。

 「仕事をすると失敗する」

 「だから、やりたくない」

 まさに「失敗のスパイラル」に入り込んでいる状態です。

 つまり、

 ・スタートが「成功体験」 → 成功のスパイラル

 ・スタートが「失敗体験」 → 失敗のスパイラル

 ですから、できる人の「成功のスパイラル」を形成するためには、できるだけ早く成功体験をして、達成感、自己効力感を得て、「仕事(行動)の結果=メリットのあるもの」という図式をつくる必要があるのです。

 子どもの教育を例にとればわかりやすいでしょう。

 行動科学マネジメントによる教育では、何よりも子どもの達成感、自己効力感を大事にします。

 たとえば漢字の書き取りが苦手な子どもがいたとします。学校のテストは、いつも50点以下です。

 そんな子を、漢字が得意な子に変える方法……それは成功体験を与えることです。

 とにかく、まずはテストで「100点」を取らせるのです。

 その子が小学校5年生であれば、3年生の漢字問題のテストをやらせる。4年生であれば、2年生のテストをやらせる。最初に100点が取れなかったとしても、練習させて、まずは100点を取らせるのです。

 そして、100点を取れるレベルがわかったなら、何度も同じレベルのテストを繰り返し、100点を取るという体験を何度もさせるのです。

 こうして子どもは、100点を取ったという達成感と、100点を取れるという自己効力感を得て、またそれらを得たいがために、自発的に練習するようになるのです。

 ビジネスも、これと同様です。

 部下に、できるだけ早い段階で「100点」を取らせる。彼はそこをスタート地点として、「成功のスパイラル」に入っていくことが期待できます。

 ビジネスでいう「100点」とは、確実にこなせる課題のこと。

 部下の成長を願うあまり、いきなりレベルの高い要求をすることは、相手を「失敗のスパイラル」へと導くようなものです。

 そして、確実に課題をこなした際には、はっきりと「ほめる」ことです。

 「上司にほめられた」……それは経験の少ない社員にとって、強烈な「成功体験」となるのです。

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部下をほめるのは苦手?

著者紹介

石田淳(いしだ・じゅん)

社団法人行動科学マネジメント研究所所長

アメリカのビジネス界で絶大な成果を上げる行動分析、行動心理学を軸にしたマネジメント手法を、日本人向けに改良し、「行動科学マネジメント」のメソッドとして体系化。意志の力に頼らない再現性の高い方法論として、人材育成や組織活性化に悩む企業にとどまらず、教育、スポーツの現場でも幅広く成果を上げている。
社団法人行動科学マネジメント研究所所長。株式会社ウィルPMインターナショナル社長兼CEO。米国行動分析学会会員。日本行動分析学会会員。
著書に、『教える技術』(かんき出版)、『なぜ一流は「その時間」を作り出せるのか』(青春出版社)、『行動科学マネジメント入門』(ダイヤモンド社)などがある。

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