部下の何をほめればいいのか――「辞めさせない」マネジメント
2015年08月21日 公開 2023年02月15日 更新
《PHPビジネス新書『「辞めさせない」マネジメント』より》
部下を伸ばす「ほめ方」とは
「ほめられる」ことは、部下にとっての「成功体験」
「買ってもらえた! うれしい!」という達成感がさらに、「自分にはできるんだ」という自信=自己効力感(セルフエフィカシー)を引き出し、「自分はもっとできるはず」と、次の努力へと向かわせるのです。
そして、努力によって得た成果が、また達成感と自己効力感を引き出し、さらに次の努力へと向かわせる……。
いわば「成功のスパイラル」に入るのです。
一方、なかなかパフォーマンスを上げられない営業マンは、「お客様に買ってもらえなかった」「お客様に怒鳴られた」「上司に怒られた」といったネガティブな体験を引きずり、お客様へアプローチすることさえ躊躇します。
「できれば、お客様と接するのは嫌なんだけど……」
こんな人がパフォーマンスを上げられるわけはないでしょう。
「仕事をすると失敗する」
「だから、やりたくない」
まさに「失敗のスパイラル」に入り込んでいる状態です。
つまり、
・スタートが「成功体験」 → 成功のスパイラル
・スタートが「失敗体験」 → 失敗のスパイラル
ですから、できる人の「成功のスパイラル」を形成するためには、できるだけ早く成功体験をして、達成感、自己効力感を得て、「仕事(行動)の結果=メリットのあるもの」という図式をつくる必要があるのです。
子どもの教育を例にとればわかりやすいでしょう。
行動科学マネジメントによる教育では、何よりも子どもの達成感、自己効力感を大事にします。
たとえば漢字の書き取りが苦手な子どもがいたとします。学校のテストは、いつも50点以下です。
そんな子を、漢字が得意な子に変える方法……それは成功体験を与えることです。
とにかく、まずはテストで「100点」を取らせるのです。
その子が小学校5年生であれば、3年生の漢字問題のテストをやらせる。4年生であれば、2年生のテストをやらせる。最初に100点が取れなかったとしても、練習させて、まずは100点を取らせるのです。
そして、100点を取れるレベルがわかったなら、何度も同じレベルのテストを繰り返し、100点を取るという体験を何度もさせるのです。
こうして子どもは、100点を取ったという達成感と、100点を取れるという自己効力感を得て、またそれらを得たいがために、自発的に練習するようになるのです。
ビジネスも、これと同様です。
部下に、できるだけ早い段階で「100点」を取らせる。彼はそこをスタート地点として、「成功のスパイラル」に入っていくことが期待できます。
ビジネスでいう「100点」とは、確実にこなせる課題のこと。
部下の成長を願うあまり、いきなりレベルの高い要求をすることは、相手を「失敗のスパイラル」へと導くようなものです。
そして、確実に課題をこなした際には、はっきりと「ほめる」ことです。
「上司にほめられた」……それは経験の少ない社員にとって、強烈な「成功体験」となるのです。