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日経新聞は読むのではなく、まず切る

佐藤治彦(経済評論家/ジャーナリスト)

2012年07月20日 公開 2022年09月08日 更新

《 PHPビジネス新書『日経新聞を「早読み」する技術』より》

読まなければいけないのに読めない記事

 読まなければいけないのに読めない記事。ビギナーにとってはわからなくて読めない記事。いや、私にとってもそんな記事は山ほどある。それは、時間がなくて読めない記事だ。日経新聞は朝刊だけで新書2冊分の量の文字がある。それを全部くまなく読むことは不可能だ。

 けれども実は、読まなきゃいけないなあと思っているのに読めていない記事は、誰にとっても宝のような存在だ。きちんと読んでわかるようになれば、もしくは、重要な情報や知識として自分のものにすれば、それはひとつ壁を越えたことになる。例えば、ビジネスにおいて、より正確な判断を下す材料になるだろうし、個人でも投資をするときに的確な予想を立てる根拠になるからだ。自分自身をビジネスマンとして、経済のわかる人材として成長させる水であり肥料のようなものだ。

 読まなければいけないのに、読めないという記事もいつまでも放っておけない。

 そのとおりだろう。

 付け加えると、重要だなと思って何とか読んだ記事の中にも、消化不良の記事があるはずだ。読んだのだけれど、何となく自分の中に上手く収まった気がしない。もう一度考えてみたい。そういった消化不良の記事も放っておくわけにはいかない。

 さらに、日経新聞の中には、将来、仕事や生活、投資の局面できっと役に立ちそうだと思う記事がよくある。記事だけでなく、表やグラフもそうだ。読んだときにはわかった、満足したと思っても、将来必要になるときがきっとくると思われる記事がある。それらを、一度読んだからといってそのままにするのも良くない。

日経新聞は読むのではなく、まず切る

 それらのきっと大切な、読んで自分のものにしておいた方がいいとチェックした記事をどうするか。そういった記事を、古新聞の束の中に放り込んではいけない。なぜなら、それらは決して古い記事になったわけでなく、個々の読者にとって、今も将来も、必要で新しいNEWSだからだ。

 では、どうすればいいか?

 私は、特に気になる記事を切り取ってしまうことをすすめている。カッターでもはさみでも構わないから、記事を切り取ってしまう。そうした記事たちを次は時間で選別する。

 緊急性を考えるのだ。

 新聞記事でも雑誌記事でも、書籍のそれであっても、情報はタイミングが重要だ。

 情報の価値は時間とともに変わっていく。今すぐ知っておかなくては価値がないものもあれば、すぐにわかっておく必要性の低いものもある。

 そうした観点から、記事をわけてほしいのだ。

 できるだけ早く片付けてしまいたい記事。今日、明日といった緊急性の高いもの。

 数日中に自分のものにしてしまいたい記事。早めの対応が必要な記事。

 いずれはきちんと読まなくてはいけない記事。将来、この内容が必要となるタイミングがくる記事。資料性の高い記事など。

 自分の基準で、記事をわけてほしいのだ。

記事を持って歩こう

 読まなくてはいけないのに読めていない記事。読んだけれどもイマイチ消化不良で、もう一度読んでよく考えてみたい記事、今はよくわからないがじっくり考えながらきちんと理解したい記事。ビジネスなどの局面で将来、力を発揮しそうな記事。それらは、ビジネスをする者にとって、自分の可能性を広げる宝物のような記事だ。それならば、それらの記事を常に持って歩いてもらいたいというのが、私の考え方である。

 読まなくてはいけない記事を、読むべきタイミングと緊急性によって、2つにわけてもらったとしよう。

 わけ方はもちろん、個々の方法で好きにやってもらえばいいのだが、あまり複雑にしてしまうと、整理することに時間を取られたり、考え込んでみたりして本末転倒になってしまう。

 シンプルに、緊急性に応じて2段階くらいにするのがいいと思う。

緊急性の高い記事はスーツか手帳に入れる

 まず、緊急性の高い記事は、スーツのポケットに入れてしまう。くしゃくしゃになったって構わない。切り取るだけでは、大学の授業で友達のノートをコピーしても、それじゃ理解していないのと同じだ。

 でも、切り取るだけでも進歩なのだ。自分はこういったことを知りたい、知らなくちゃいけないと意識したからだ。ポケットでも、手帳に挟んでしまうといったことでも、何でもいい。時間があるときにすぐに取り出せるようにしてもらいたい。すぐに取り出せるのであれば、電車の待ち時間や訪問先に早くついてしまったとき、昼休みのちょっと空いた時間など、いや、洋式トイレで用を足す間でも何でもいいじゃないか。ふとしたときに読めるようにしてしまうのだ。

緊急でない記事はクリアファイルに入れる

 早めに読みたいけれども今日、明日でなくても構わないというものであれば、帰宅したあとに記事を切り取り、クリアファイルに放り込んでしまおう。そのクリアファイルを、持ち運ぶバッグの中に入れてしまうのだ。そして、緊急性の高い記事がなくなったときに読むことにする。そうでなくても、出張の移動時間、帰宅時の電車で座ることができたとき、時には湯船に浸かりながら読んでしまう。

 こうしてわけておくと、不思議なことがわかってくる。重要だなあと思っていた記事がそうでなくなったり、記事の中に知っておかなくちゃいけないことと、そうでないことが混在していたりすることがわかってくる。要らないなと思ったら、もちろんゴミ箱に直行させればいいのだ。

 

佐藤治彦

(さとう はるひこ)

経済評論家、ジャーナリスト

1961年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所修了。外資系金融機関でデリバティブを担当。退職後は、国連ボランティア、経済誌記者、経営コンサルタントなどを経験。また、1991年ごろからは、経済評論家、ジャーナリスト、放送作家として活動を始める。日本ペンクラブ会員。趣味は海外旅行、作詞作曲、観劇。
主な著書に、『知識ゼロからの為替相場入門』(幻冬舎/弘兼憲史氏との共著)『最新・金融商品5つ星ガイド』(講談社文庫)『アジア自由旅行』(小学館/島田雅彦氏との共著)『ええじゃないか!』(オーエス出版/テリー伊藤氏との共著)『使い捨て店長』(洋泉社)などがある。


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