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西日本大震災という「時限爆弾」

鎌田浩毅(京都大学教授)

2015年12月16日 公開 2022年11月10日 更新

鎌田浩毅著『西日本大震災に備えよ』より

東海地震、東南海地震、南海地震、地盤の動乱が始まった

 

3つの巨大地震が発生する確率

 政府の地震調査委員会は、日本列島でこれから起きる可能性のある地震の発生予測を公表している。全国の地震学者が集まり、日本に被害を及ぼす地震の長期評価を行っている。今後30年以内に大地震が起きる確率を、各地の地震ごとに予測している。

 たとえば、今世紀の半ばまでに、太平洋岸の海域で、東海地震、東南海地震、南海地震という3つの巨大地震が発生すると予測している。すなわち、東海地方から首都圏までを襲うと考えられている東海地震、また中部から近畿・四国にかけての広大な地域に被害が予想される東南海地震と南海地震である。

 これらが30年以内に発生する確率は、M8.0の東海地震が88%、M8.1の東南海地震が70%、M8.4の南海地震が60%という高い数値である。しかもそれらの数字は毎年更新され、少しずつ上昇しているのである。今世紀の半ばまでには必ず発生すると断言しても過言ではない。

 地震の発生予測では2つのことを予測している。1つは今から数十年間において、何パーセントの確率で起きるのかである。巨大地震は「プレート」と呼ばれる2枚の厚い岩板の運動によって起きる。プレートが動くと他のプレートとの境目に、エネルギーが蓄積される。

 この蓄積が限界に達し、非常に短い時間で放出されると巨大地震となるのだ。プレートが動く速さはほぼ一定なので、巨大地震は周期的に起きる傾向がある。この周期性を利用して、発生確率を算出するのである。 

 たとえば100年くらいの間隔で地震が起きる場所を考えてみよう。基準日(現在)が平均間隔100年の中ほどに入っているケース、つまり、銀行の定期預金にたとえればまだ満期でない場合に、発生の確率は低くなる。しかし、基準日が満期に近づくと、確率は高くなる。実際には確率論や数値シミュレーションも使って複雑な計算を行うのである。

 もう1つはどれだけの大きさ、つまりマグニチュードいくつの地震が発生するのかである。こちらは、過去に繰り返し発生した地震がつくった断層の面積と、ずれた量などから算出される。

 こうして30年以内に発生する確率予測が出されるのだが、これはコンピュータが計算するので誰がやっても同じ答えが出る。逆に言うと、人間の判断が入る余地が生じないので、国としてはこうした情報を出したがるとも言えよう。

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「西日本大震災」という時限爆弾

著者紹介

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

京都大学教授

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。通産省を経て97年より京都大学教授。専門は地球科学。テレビや講演会で科学を解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気。著書に『地震と火山の日本を生きのびる和恵』(メディアファクトリー)、『火山と地震の国に暮らす』(岩波書店)、『火山噴火』(岩波新書)『もし富士山が噴火したら』『座右の古典』『一生モノの勉強法』(以上、東洋経済新報社)など。

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