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日本特殊陶業社長・尾堂真一 変革に挑む名古屋の名門グローバル企業

川上恒雄(取材・構成)石田貴大(写真撮影)

2016年02月15日 公開 2024年12月16日 更新

PHP松下幸之助塾<リーダーの条件>特集号より

自動車に用いるスパークプラグや酸素センサで世界トップシェアを誇る日本特殊陶業。創業80年の歴史を誇り、海外売り上げ比率が8割にも上る名古屋の名門グローバル企業だ。この伝統ある企業で2011年、常務昇進からわずか1年後、8人抜きで社長に就任したのが尾堂真一氏。半世紀ぶりの50代社長、しかも初の営業畑出身ということで、大きな話題を呼んだ。この抜てきは別の見方をすれば、激しいグローバル競争に直面する同社の危機意識の表れでもある。名門企業の変革に挑む尾堂社長に、ご自身の経営者への道と、今求められるリーダーのあり方について語ってもらった。

 

守りに入るなリスクを取れ

グローバルな視点を持つ

取締役になってから、毎月のように帰国し、日本特殊陶業の取締役会に出るようになりました。そのとき疑問に思ったのが、取締役が20数人もいるのに、当初は私も含め、発言する人がほとんどいなかったことです。しかも、決定が遅い。それが経営のスピードにも表れてくる。それで当時の副社長によく、「この会社はどうなっているんですか?」などと不満を訴えていました。だから、自分が社長になったときに、執行役員制を採用し、取締役を一気に8人に減らしたのです。

そのほか、権限委譲があまりできていませんでした。部長にすら十分な権限が与えられていない。言い換えると、部長も課長も、管理職としての仕事をそんなにしていないのです。海外のマネジャーをみると逆で、ライン業務のことはよく知らないけれども、部下の評価はしっかりやっています。

権限を委譲すれば、確実に事業のスピードが高まる。それで失敗が増えたとしても、私はスピードの速いほうがいいと考えています。そのためには、口だけで権限委譲を言うのではなく、ルール化するべきでしょう。

日本企業は一般的に、これまであうんの呼吸でうまく回してきたかもしれませんが、これだけグローバル化が進むと、そうはいかなくなってきます。やはり、外国人にもクリアに分かるようなかたちにしていかなければならない。

当社は海外売り上げが8割と、かたちのうえではグローバル企業なのですが、海外から当社をみていると、人事部門と総務部門が本体ばかりに目を向けていることが気になりました。しかし、海外を含めた連結で社員は約1万3000人、そのうち本体は約6000人ですから、半分にすぎません。

同じグローバル企業でも商社などとは異なり、製造業の場合、工場の労務管理に力を入れる必要がありますから、やむを得ない面もあるのですが、海外工場も増えていることを考えると、とくに人事部門はグローバルな視点を持つべきです。たとえば、工場の現場で働く社員が海外に行く際は、国際人としての教育を徹底する必要があるでしょう。

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の一部を抜粋したものです。

 

著者紹介

尾堂真一(おどう しんいち)

日本特殊陶業社長

1954年鹿児島県生まれ。’77年専修大学商学部卒業、日本特殊陶業入社。2003年自動車関連事業本部営業本部海外市場販売部長。2005年米国特殊陶業社長(2010年まで)。2007年日本特殊陶業取締役。2010年常務取締役。2011年代表取締役社長、現在に至る。

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