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ローカル企業の常識を疑え!「地方経済に未来はない」という俗説

冨山和彦(経営共創基盤[IGPI]代表取締役CEO)

2016年05月01日 公開 2022年10月27日 更新

グローバルリーダー人材がいないとダメ?

 このような話をすると、「地方にはグローバルなリーダー人材がないので、経営やサービスにイノベーションを起こして、生産性を高めるなんて無理だ」という、これまた愚痴のような言い訳のような声が出てくる。

 しかし、多くのローカル企業の再生と再成長にとって重要なのは、しっかりと地に足を着けた、地味な努力の積み重ねである。「分ける化」「見える化」して、業務、事業、商品ごとの収支の改善努力を行ない、儲かることを一生懸命やり、儲からないことは儲かるように改善するか、それが難しければやめる。緻密に地道にPDCA(Plan〈計画〉、Do〈実行〉、Check〈検証〉、Action〈対策〉)を回し続けることが、ローカル企業の経営の基本なのだ。

 だから、ハーバードだのスタンフォードだのという類のMBAを持っているグローバルエリートはまったく不要だし、派手なスーパーカリスマ経営者もいらない。それなりの資質を持っている人が、正しく努力し経験を積めば、かなりの確率で到達できるであろうレベルの実務的な経営人材こそが求められている。

 もちろん多くの地方は、何世代にもわたって東京に人材を持っていかれ、リーダー人材の空洞化が起きている。しかし、東京の側では、まさにグローバルリーダー人材が求められる傾向が強まっている中で、中途半端な状況に陥る優秀な人材が増えているのも事実である。そういった人材の中には、強い志を持って、然るべき経験とトレーニングを積めば、ローカル企業で大活躍できる人材は少なくない。地方バス事業の再生を含め、IGPIによるローカル企業の再生、再成長も、そうしたタイプの人材に支えられているケースが多い。ここにも改善シロは満載なのだ。

著者紹介

冨山和彦(とやま かずひこ)

経営共創基盤CEO

1960年生まれ。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年産業再生機構設立時にCOOに就任。解散後、経営共創基盤(IGPI)を設立。現在、オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、みちのりホールディングス取締役、 経済同友会副代表幹事、財務省・財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府・税制調査会特別委員、文部科学省・国立大学法人評価委員会「官民イノベーションプログラム部会」委員、経済産業省・「稼ぐ力」創出研究会委員などを務める。
著書に、『ビッグチャンス』『なぜローカル経済から日本は甦るのか――GとLの経済成長戦略』 『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』(以上、PHP研究所)、『稼ぐ力を取り戻せ!――日本のモノづくり復活の処方箋』(日本経済新聞出版社)などがある。

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