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創業者 松下幸之助への思いと100周年~津賀一宏・パナソニック社長

マネジメント誌『衆知』

2016年06月02日 公開 2024年12月16日 更新

「生成発展」こそパナソニックの道。創業100周年を控え、パナソニックは今、大きな変化を遂げようとしている。創業者松下幸之助が唱え続けた「衆知経営」を基軸に、経営の舵取りを担う津賀一宏社長にお話をうかがった。

※構成:坂田博史、写真撮影:山崎兼慈
『衆知』2016年5・6月号、特集「難局を打破する組織力」より一部抜粋

 

100年続いてきた会社だから、次の100年も安泰というわけではありません……

加護野 社長に就任されて3年、今だから感じる創業者の偉大さとは何でしょう。

津賀 偉大さという言葉で語れるレベルではありません。何が一番すごいかといえば、やはり「先見の明」です。私が試行錯誤しながら、「こうだ」と思ったこと、これを何十年も前にすでに述べているのが創業者です。

松下電器がまだ小さく、世の中が混乱していた時に、こういう話をされたのかと考えると、「おそるべし」としか言いようがありません。しかも、述べているのは非常にシンプルなことです。

ただ、なかには、本当なのかなと訝しんできたけれど、そう信じるべきだと思うようにしている言葉もあります。例えば、私の部屋に掲げられている「生成発展」という言葉。これは、まず私からは到底生まれてきません。

世の中が生成発展している背景には、すべてのものを生じせしめている「根源」の存在があるという、やや神がかり的な考え方ですが、どんな目標も信じないと始まらないですね。私は信じるようにしています。

加護野 創業100周年が2年後に迫り、いろいろな準備が始まりつつあります。

創業者が掲げた250年計画からすれば、100周年も1つの通過点にしかすぎません。とはいえ100周年を津賀社長の代で迎えられるということにおいて、何か期するところはございますか。

津賀 大いにありますね。確かに100年続いてきた事実はあります。けれども、次の100年も続くかというと、そもそもどんな社会になるのかが読めないですよね。したがって、まず次の世代に向けて、つないでいくことが非常に重要です。社会の変化に対して、私たちがどんな対応をできるか、そのための一番大きな戦略は会社を変えていくということでお話し申し上げました。

過去100年続いてきた会社だから、次の100年も安泰というわけではありません、むしろ全く逆です。過去の成功体験にとらわれずに、新しいパナソニックをつくるにはどうすればいいか。ここを考えることで、社員のやりがいにもつながると思います。

 

津賀一宏(つが・かずひろ)
パナソニック社長
1956年大阪府生まれ。大阪大学基礎工学部生物工学科卒業。79年に松下電器産業(当時)に入社。86年カリフォルニア大学サンタバーバラ校コンピュータサイエンス学科修士課程修了。その後、マルチメディア開発センター所長、パナソニックオートモーティブシステムズ社社長、AVCネットワークス社社長、代表取締役専務などを経て、2012年6月より代表取締役社長。

聞き手:加護野忠男(かごの・ただお)
甲南大学特別客員教授
1947年大阪府生まれ。88年神戸大学経営学部教授。99年神戸大学大学院経営学研究科教授。2011年4月より甲南大学特別客員教授に就任。『松下幸之助に学ぶ経営学』(日本経済新聞出版社)、『経営の精神』(生産性出版)など著書多数。

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