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40歳を超えたら、運動は「8,000歩/20分」のウォーキングで十分

青栁幸利(医学博士)

2016年06月09日 公開 2023年10月23日 更新

速すぎ、歩きすぎはかえって健康を害することも!?

運動が苦手な人でも始めやすく、健康効果が高いとされるウォーキング。「たくさん歩くほど良い」と思っている人も多いが、実は、歩きすぎはかえって逆効果になることも!? 6月10日に発売された『THE21』7月号では、本当に健康に良い「正しいウォーキング」の実践法を、第一人者である青栁幸利氏に教えていただいた。《取材・構成:塚田有香》

※本稿は『THE21』2016年7月号より一部抜粋・編集したものです。

 

40代はジョギングからウォーキングへの切り替え期

健康維持の方法として、ウォーキングは定番となりつつあります。しかし、40代くらいだと「ウォーキングは高齢者向けで、自分たちはもっと運動量が多いジョギングなどをすべきだ」と考えている人も多いようです。

しかし、40代こそ、そろそろジョギングからウォーキングへの切り替えを考えたほうが良い時期です。年齢を重ねると血管の修復力が低下し、激しい運動をしている最中に動脈硬化を起こして突然死するケースが増えるからです。

また、ハードなトレーニングを続けると、免疫力が低下して病気になりやすくなります。さらに見逃せないのが関節への負担です。年齢とともに自然と関節がすり減るうえに、激しい運動でさらに負荷をかけると、近い将来、膝や腰を痛めることになります。そうなれば、ウォーキングさえできなくなり、身体を動かす機会が減って、一気に体力が衰えるリスクがあります。

ウォーキングにしても、「歩けば歩くほど健康になれる」と信じている人がいますが、それは大間違い。よく「1日1万歩を目指しなさい」と言われますが、歩数だけにこだわっても意味はありません。

私は15年間にわたり、5,000人を対象に1日24時間、365日の生活行動を追跡調査した、通称「中之条研究」を行ないました。その結果、健康を保つには「1日の歩数」と「中強度の運動量」の二つを組み合わせて考えることが必要だとわかったのです。

運動には「強度」があります。これは、簡単に言えば「骨や筋肉にどれくらいの刺激があるか」ということ。「中強度の運動」に当たるウォーキングとは、「なんとか会話ができる程度の速歩き」です。鼻歌を歌いながらのんびり歩けるくらいだと遅すぎるし、ゼイゼイ息が切れるほどだと速すぎるということです。

これを踏まえて、最も健康効果が高いウォーキングの方法は、どのようなものか。それは、「1日の歩数は8,000歩。そのうちの20分は中強度の歩行をする」というものです。この「8,000歩/20分」のバランスこそ、ウォーキングの黄金律なのです。

図にウォーキングと病気の関係を示したので、ご覧ください。これは中之条研究から得られたデータをグラフ化したもので、「歩数」と「中強度の活動時間」が増えるにつれて、予防できる病気の種類が増えることがわかります。

「8,000歩/20分」を続けたグループは、うつ病、認知症、心臓病、脳卒中、がん、動脈硬化、骨粗鬆症になる確率が低く、高血圧、糖尿病の発症率がこれより運動量の少ない人と比べると圧倒的に低くなります。ほとんど「万病予防」と言っていいほどの健康効果が証明されたのです。

ただし、メタボの人に限っては、「1万歩/30分」の運動が有効です。メタボ解消以外の効果は、「8,000歩/20分」も「1万歩/30分」も変わらないことが明らかになっていますから、とくに肥満対策の必要がない人は「8,000歩/20分」を実践すれば十分です。

 

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「ながらウォーキング」を日々の生活に取り入れよう

著者紹介

青栁幸利(あおやぎ・ゆきとし)

医学博士

1962 年、群馬県生まれ。筑波大学卒業。トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。現在、東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム副部長、運動科学研究室長。群馬県中之条町に住む65歳以上の全住民5,000人を対象に、15 年以上にわたって身体活動と病気予防の関係についての調査を実施。この「中之条研究」は「奇跡の研究」として世界中から注目を浴びる。研究結果をもとにした「メッツ健康法」は自治体や大手企業にも導入されている。著書に『やってはいけないウォーキング』(SB新書)など。

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