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生き方

ありのままに、ひたむきに、不安な今を生きる

大谷光淳

2016年09月21日 公開 2016年09月23日 更新

親鸞聖人の血脈を継ぐ第25代門主が語る難しい時代を生きるヒント

 

相手を自分の思いどおりにしよう、押しつけようとすると、いろいろな問題が出てくる

 最近よく話題になる学校や職場でのいじめは、きっと昔からあったのだと思います。つまり、自分と比べて弱い立場の人に対し、いろいろなかたちで力が向いてしまうのです。また親子間の場合のいわゆる虐待については、親子関係が昔とは変わってきているのではないかという気もします。

 いずれにせよ、いじめでも虐待でも、結局は、自分と相手との関係の中で、相手に対してどういう気持ちを持てるかということが問題になります。いじめや虐待には、相手を自分の都合どおりに動かそうとする思い、相手に自分の思いを押しつけようとする気持ちが根底にあるのでしょう。差別やさまざまなハラスメントと言われるようなことも同じだと思います。

 「ご縁を大切にする」と言いますが、相手との関係を大切にすることができれば、いじめや虐待にはつながりません。つまり、自分とほかの人との関係性をどのようにつくっていくのか、自分と相手をまったく対等な人間として認めることができているかどうかです。

 そもそも人はすべてのものとの関係性の中に生きています。そういう関係性を自分の都合のよいように無理に変えよう、あるいは断ち切ろうとするところに問題があるのでしょう。

 

人間関係が希薄だということは相手のことよりも自分を優先してしまっているためではないか

 いまの時代はインターネットを使えば、日本にいても世界中のあらゆるものを見られるようになっています。

 確かに昔よりはるかにたくさんの映像が見られるようになりましたが、結局、その映像を見るだけでその後ろにあるもの、目に見えないものを想像する力が弱くなってきているのではないかという気がします。

 特に若い人は、映像を見てものごとを理解しようとする傾向があります。昔から「行間を読む」という言い方がありますが、小説などにしても、書いてある表面的なことしか理解できない人が増えているのではないかと感じます。表面的なものしか見えなくなると、相手の気持ちに寄り添うことも難しくなります。

 人間関係が希薄になり、結局、相手のことよりも自分のことが優先されてしまう。親子の間でさえ、そういうことが起きているのではないかと思います。

 意識するしないにかかわらず、人間も自然もすべてのものごとは本来、互いにかかわり合って存在しているのです。そのようにつながり合っていることの素晴らしさを忘れていってしまうのは、たいへんに残念なことです。こういう時代だからこそ、この世界に広がるかかわりと、その大切さに気づいていきたいと願っています。

 

自己中心的な私が煩悩の中でどうやって生きていくのか、一日一日を意味あるものにしよう

 すべてのものは移り変わって何ひとつ変わらないものはないというお釈迦さまの「諸行無常」の教えは、時代と地域を超えた真理の一つなのですが、親鸞聖人の教えは、この真理に反する私の姿というものを究極的に突き詰めていかれた結果の教えだと思っています。

 時代や地域を問うことなく「真理」と向き合っていれば、世界中どこででも、私たちはそれをよりどころとして生きていけるはずです。

 しかし、出家をせずにこの世間に生きていく私たちは、どうしても自己中心的なあり方を克服しきれません。

 自己中心的な姿、考え方を持っている私たちがどうやって生きていくのかを示してくださったのが、親鸞聖人なのです。煩悩から離れきることはできなくとも、阿弥陀さまの光に照らされながら、一日一日を「意味あるもの」として生きていく。一日一日をただ単に「過ごしていく」のではなく、教えに照らされて「意味のあるもの」として生きていく。

 この社会から離れるのではなく、素晴らしいご縁の中で、互いに支え合いながら生きていくことが大切でしょう。]

大谷光淳著『ありのままに、ひたむきに』より、一部を抜粋編集

著者紹介

大谷光淳(おおたに・こうじゅん)

西本願寺第25代門主、本願寺住職

1977年、京都市生まれ。浄土真宗本願寺派(本山・本願寺)第25代門主、本願寺住職。法名は釋専如(しゃく・せんにょ)。第24代門主大谷光真(釋即如)の長男として生まれ、2000年、法政大学法学部卒業。2005年、龍谷大学大学院文学研究科博士課程単位取得。龍谷大学文学部非常勤講師、中央仏教学院講師を経て、2008年、本願寺築地別院副住職。2014年6月、法統を継承し門主となる。門主就任を阿弥陀如来と宗祖親鸞聖人に告げる伝灯奉告法要を、2016年10月1日から2017年5月31日まで本山で10期80日にわたって80座営む。

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