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生き方

僧侶・酒井雄哉さんが語る「悩みとの向き合い方」

酒井雄哉(天台宗大阿闍梨)

2016年11月15日 公開 2022年12月27日 更新

―――人間はいろいろな悩みを抱えているけど、悩みを自分で大きくする必要はないんだ。世の中はぐるぐる回っているんだから、ダメだと思ってもジタバタせず、生きていることに感謝していれば、必ずチャンスは訪れるよ。

天台宗大阿闍梨の酒井雄哉さんは、自身の人生経験から人々が抱える悩みについてのアドバイスをする。

※本稿は、酒井雄哉 著『今できることをやればいい』(PHP研究所)より、内容を一部内容を抜粋・編集したものです。

 

「悩み」を自分で大きくしていないか

石ころを池の中に落とすと、その波紋がどんどん大きくなって、広がっていくよね。それと同じで、本当は石ころくらいの大きさの、なんでもない悩みなのに、自分で悩みの波紋をどんどん広げている人が多いんだ。

例えば、会社に勤めている人が、「仕事が忙しくて、追い込まれてしまった」と、悩んでいるとするよね。だけど、世の中にはリストラされて、働きたくても働けない人がたくさんいるし、勤めていても、明日をも知れぬ身という人もいる。

忙しいくらい仕事があるというのは、仕事がなくて困っている人から見れば、すごくうらやましいことかもしれないんだ。「仕事があるってことは、実はありがたいことなんだ」と思えば、忙しすぎてつらいという悩みも、少し軽くなるんじゃないかな。

家族にまつわる悩みも同じだよ。両親のことを「うるさいなあ」と思って悩めるのは、両親がいるからだよね。世の中には両親のいない子供たちも、たくさんいる。

反対に、子供のことで悩めるということは、子供がいる証。子供のいないご夫婦だって、いっぱいいるからね。家族のことで悩めるだけでも、十分ありがたいことなんじゃないのかな。

悩みの渦中にいると、知らず知らずのうちに、自分で悩みを大きくしてしまい、悩んでいる事柄が、本当は贅沢な悩みで、ありがたく感謝することだというのを忘れてしまう。もしかしたら、自分が気づいていないだけで、勝手に悩み事をつくり出して、大きくしていることも、あるんじゃないかな。

もし、自分ばかりが大変で、つらいと思えてきたら、悩み事を別の視点からとらえなおしてみるといいよ。

さっきの例でいえば、「仕事をさせていただけているんだから、今、これを乗り切っていくのが、自分の役割かもしれないな」とか、「家族のいない人と違って、家族がいてありがたいことなんだから、これを乗り越えていくのが自分の役割なのかな」と考えて、悩みを乗り越えていったらどうかな。

苦しいことがあっても、必ずなにかの役に立つんだと思うよ。苦しさがあって、初めて苦しみがどういうものかを知ることができるんだしね。苦しみがどういうものかを知らないで、最初から楽天的に生きていたら、他人の苦しみや悩みを聞いても、なんで苦しいのか全然わからないからね。

 

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苦しいときは、ジタバタしたって仕方ない

著者紹介

酒井雄哉(さかい・ゆうさい)

比叡山飯室谷不動堂長寿院住職、天台宗大阿闍梨

1926年、大阪府生まれ。太平洋戦争時、予科練へ志願し、特攻隊基地・鹿屋にて終戦。戦後、職を転々とするがうまくいかず、比叡山へ上がり、40歳で得度。約7年かけて4万キロを歩く荒行「千日回峯行」を80年、87年に2度満行。その後も国内外各地への巡礼を行っている。
主な著書に『ムダなことなどひとつもない』(PHP研究所)『一日一生」(朝日新書)などがある。

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