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生き方

のんびり、ゆっくり生きるコツ

斎藤茂太(精神科医/随筆家)

2011年08月25日 公開 2024年12月16日 更新

迷いながら、ゆっくりでよい

めまぐるしく変化する現代社会では、何ごとにもムダを避け、合理性を優先する傾向があります。最小限の時間と労力で最大限の効果をあげられる人が「有能」と評価されます。

しかし、有意義な人生は、効率や合理性だけでつくり出すことはできません。じっくりと考えたり迷ったり、ゆっくり休んで心の疲れを取る時間も含めて、あなたの人生は充実するのです。

悩んだり、ときには選択を間違えてまわり道をすることを「時間がもったいない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、「人生にはムダな時間はない」と私は長年の経験をもって断言します。

私が小学校3年生のとき、自宅と病院が火事になりました。当時院長だった祖父は病院に火災保険をかけておらず、祖父に代わり苦労を重ねた父(斎藤茂吉)は、経衰弱になったほどです。しかし、焼け残った風呂場で父が執筆した作品は今でも文学史に残る名作になりました。

その後、再び病院が戦争で焼失したのを再建したのが私です。その10年間は本当に大変でしたが、その体験がなければ今の私もないでしょう。つらさをバネにして伸びるかどうかは、本人の考え方や感じ方ひとつです。

長い人生には、よいときもあれば悪いときもあります。マイナスだと思っていたことが、のちのち大きな幸運をもたらすこともあります。毎日が平穏過ぎると現状に甘え、知らず知らず努力をおこたってしまうこともあります。目の前の出来事に一喜一憂せず、じっくりと現実と向かい合ってみましょう。

全速力で駆け抜けるばかりが人生ではありません。立ち止まり、振り返りながら自分のペースで進めばよいのです。

 

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