<<つらく厳しい境遇に育っても、そのまま落ち込んでしまう人と自己肯定感を高めて力強く生きていける人がいる。なぜ違いが生まれるのだろうか?
その差を分けると注目されている能力が「レジリエンス」。アメリカで論文が多数発表されるなど注目される心理学理論で、簡約すれば「人生の挫折に対処する能力」である。
早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏によれば、挫折や落ち込みから立ち直り、ポジティブに生きられる人は共通して持っているという。
程度の差はあれども、乗り越えなければいけない困難は誰にでも訪れる。レジリエンスが高められていれば、何があっても前向きに生きていけるというのだ。
加藤諦三氏の新著『どんなことからも立ち直れる人』では、実例を通してレジリエンスを理解することで、「自ら幸せを得る力」を取り戻すことを目指している。その一節をここで紹介したい。>>
※本稿は加藤諦三著『どんなことからも立ち直れる人』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
「いつも悪いことが起きる人」の特徴
いつも悪いことが起きる人は、人生のスタートで辛いことが起きていることが多い。
人生における初めての出会い、つまり、親との出会いに挫折している。間違ったスタートであることに気づかないままに、頑張って生き続けた。
その結果、頑張っているのに悩みだけがどんどん大きくなっていく。
間違った生き方をしていたと気がついた時には、悩みが大きくなりすぎてどこから手をつけていいのかわからなくなっている。
そこで対処しないで文句を言い出す。
次々に起きてくるトラブルに対処しないで、「もうどうにもならなくなった」ときに「人を恨み」「自分の人生の運命を嘆く」ことになる。
「それにもかかわらず、神経症的問題の根源は、その両親との関係にある。これは、フロイドの成した不朽の貢献の一面である(註1)」
これはフロムの言葉であるが、両親との関係に恵まれて生まれた人の人生と、恵まれなかった人の人生との違いは、はかり知れない。
不幸な関係はなにも肉体的な虐待のようなことばかりではない。
権威主義的な親の場合には、子どもは親を深く内面化してしまう。その内面化された親から抜け出すことがなかなか難しい。
小さい頃から、何とかして親の期待するような人間になろうとして頑張って、自己喪失に陥る。自分でない自分になろうと努力する。そこで自分でない自分で生き始める。
自分自身でない生き方をする結果、悪いことばかりが起きる。その悪いことが人生の最後まで続いてしまうことも多い。
それらのことを承知した上で、レジリエンスの問題を考えていきたい。