増収増益を続ける名物社長・小山 昇の「スピード経営」実践メソッド
2017年12月21日 公開 2017年12月21日 更新
戦い方と仕組みをいち早く変え、組織の力を引き出す
経営において重要な「スピード」とは、「急いで作業すること」ではなく、「早く始めること」。世の中のトレンドを見極めて、1日でも1分でも早く変化に対応し、結果が出ることのみ実行すべし。そう語るのは、株式会社武蔵野を率いる小山昇社長だ。15年連続で増収増益を続けているその卓見と手腕は、数多くの企業経営者に支持され、各社を経営改善に導いている。生産性を高めて成果を出すために、どのような戦い方をし、仕組みづくりを行なうか。名物社長が独自のスピード経営実践メソッドを指南!
取材・構成:若林邦秀
写真撮影:長谷川博一
※本記事は、マネジメント誌「衆知」※2017年9-10月号掲載記事の一部を抜粋編集したものです。
結果が出ることだけをやる
スピード経営をするには、「やらないこと」を決めることが大事です。
多くの人は、あれもこれもと、頭の中にやりたいことをいっぱい持っています。まあ、持つのは自由です。
でも、頭でたくさん考えることはできても、体は1つしかありません。
まず「やらないこと」を決める。そして「やる」となったら、徹底的にやる。これが私のスタイルです。
その見極めはどうするのか。
よくあるのは、「よいこと」をやろうとすること。しかしこれは、ビジネスでは一番やってはいけないことです。なぜなら、「よいこと」は、まだ結果が出ていないから。
ビジネスで大事なのは、結果です。だから、結果が出ることだけをやる。
会社員の奥様が一番喜ぶのは、夫の年収が上がることです。奥様を喜ばせたいと思うのなら、年収が上がることだけをする。年収が上がらないことは、やらない。これが重要です。
会社も同じです。自社で結果が出ていることを横展開する。結果が出ないことはやらない。
この時、1つの壁にぶつかることがあります。結果が出たことを広げようとしても、結果を出した人間がノウハウを他人に教えたがらないのです。
これは仕組みの問題です。自分のノウハウを教えた人が評価される仕組みになっていないから、こういう問題が起こるわけです。
武蔵野ではノウハウは徹底的にオープンにし、全員で共有しています。
毎年、全従業員を13組に分けて、貸し切りバスですべての営業所を見てまわります。それぞれの営業所では、必ず「3推し」を説明することになっています。「3推し」とは、その営業所のセールスポイント、つまり結果が出ている3つのことです。
営業所が32カ所ありますから、全部で90以上のノウハウを得ることができます。そのうちの1つを徹底的に真似することを社員に義務づけています。
90個もあったら、1つくらいは自分にフィットするものがあるでしょう。それを「実行する」ことがポイントです。
たとえ万の学びを重ねても、実行されなければ何の結果も生まれません。学ぶことが目的ではない、実践が目的です。ここを取り違えないことです。
そのため、勉強した中で一番やさしいことを実行します。するとすぐに結果が出ます。
何も最初から最高のものを目指す必要などありません。とにかく結果の出そうなものに早く取り組むことです。うまくいかなければ、その都度やり方を変えればいい。
いい格好をしたい人間は、大きな結果を狙って難しいことをやりたがります。でも、そうは問屋が卸しません。
小さなことで結果を出したほうが、早いし簡単です。簡単なことで結果を出す人と、難しいことで結果を出せない人と、どちらが評価されるかといえば、前者に決まっています。ちなみに、武蔵野では各々の成績はもちろん、人事評価、給料や賞与もすべてオープンです。
あと、「人真似はしたくない」という誤ったプライドを持っている人間もいます。人間の行動のほとんどは人真似だということが、わかっていないのです。私たちが毎日、服を着て外に出かけるのも、スマートフォンを使うのも、すべて人真似なのですから。
人の真似は、恥ずかしいことでもなんでもない。真似をしないで結果を出せないでいるほうが、よほど恥ずかしいことです。
武蔵野ではこれまで、人の真似をして、結果が出ることだけをして業績を伸ばしてきたのです。