人生、修行時代があってこそ成長できる
2018年01月31日 公開 2024年12月16日 更新
※本記事は、横田南嶺・鍵山秀三郎著『二度とない人生を生きるために』より、一部を抜粋編集したものです。
人間としての骨格をつくるために
「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年歴史なる。何事もあきらめなければ、必ず報われる」
「答えが出ない問題を抱えてもがき、苦しむことで、心の垢が落ちていく。苦しんだ分だけ、その人は清らかになっていく」
私が掃除する横で、平気でトイレを汚す社員もいた…鍵山秀三郎
私は20歳のとき、自動車用品を扱う会社に就職しました。ところが、この業界では反社会的なことが堂々とまかり通っていました。商品が品薄になると、人の足元を見て、平気で値段を2倍、3倍につり上げるのです。
たとえば、雪が降るとタイヤチェーンが必要になります。悪質なお店は20倍の値段をふっかけます。それもタイヤに装着してしまってから、お客さまがお金を払おうとすると、「これ1本1万円です。2本だから2万円」と、1千円のものを2二万円で売りつけるのです。そんなことを日本人同士でやっていた時代でした。
こんなことをしていたら、業界はよくならないと思いました。当時、私は専務の待遇を受けていて、専用の車も用意してもらっていました。それだけの厚遇を辞退しても、この業界の悪しき習慣を変えなければいけないと思ったのです。
社長からは止められましたが、28歳のときに独立して、自動車用品販売会社の「ローヤル」を立ち上げました。当然、勤めていた会社から圧力がかかります。早くつぶしてしまえ、ということで、メーカーや問屋から商品が入ってきません。どこも売ってくれないのです。
そこで、メーカーや問屋の倉庫に眠っている商品に目をつけて、「これを私に売らせてください」と頼み込んで歩きました。「こんなもの、売れないよ」と言われたものを「これ、売りますから」と引き取って、死んでいる商品に命を吹き込む。
すると、どんどん売れるわけです。まったく競争がない分野ですから、当然と言えば当然です。値引きしなくても、正当な値段で売れていきました。そのうちヒット商品も生まれて、商売もだんだん軌道に乗ってきました。
トイレ掃除は起業したときから始めました。職場をきれいにしなくてはダメだと思ったからです。お客さまが来られたときはもちろんですが、社員が使うにしても、トイレが汚いと自分の人生も社員の人生もよくならないと思ったのです。
ところが、最初はみんな無視です。朝、私が会社に行ってトイレを掃除していても、すぐに汚す。また掃除する。また汚す。私が掃除をしている横で、平気でトイレを汚していく社員もいました。
でも、私にはこれをやり続けることしかできませんでした。今は言葉やら文章やら、いろいろな方法で人に伝えることができますが、当時の私には掃除することしかできなかったのです。ただひたすら、いいと思うことを自分でやってみせるしかありませんでした。
ところが、そういうつもりでやっていると、「あてつけがましい」と言う人が出てくるのです。ですから誰もいない早朝に出て、掃除をしていたこともあります。
ようやく共感してくれる社員があらわれ始めたのは、10年たってからです。でもせっかく始めても、またやめてしまうというくり返しで、全社的に定着したのは20年後です。28歳で起業して、20年後ですから48歳。
さらに掃除が世の中を変えるのだ、と確信が持てたのが50代の終わりです。日本全国から、掃除を教えてほしいという依頼が増えだして、予約でいっぱいになりました。するとそれまで私がやっていることを疑っていた社員たちも、外部の方々によって、意識が変わっていったのです。
アルトゥール・ショーペンハウアが言った。
1)正しいことをやれば、人から嘲笑される。
2)激しい抵抗と反対を受ける。
3)1)と2)が過ぎると、そんなことはわかっていたと、みながやるようになる。
その通りになりました。
「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年歴史なる」という中国のことわざがあります。エジソンだってあきらめずに続けたからこそ、偉大な発明ができたのです。どんな人生にもつらい時期はあります。でも、自分が信じることをあきらめずに続けていれば、必ず報われるときがやってきます。