人事のプロが教える「人材価値」を正しく見極める方法
2018年07月11日 公開 2022年08月08日 更新
3つの脳力で人材価値のスコアを算出する
この3つの力は、車のF1レースに例えるとイメージしやすいかもしれません。
F1レースでは車の性能が良いことは重要ですが、それだけではなく、実際のレースで車を操るドライバーの瞬時の判断力や、ピットクルーたちによるチームワークがそろわなければレースに勝つことはできません。
車の性能は「スキル」、ドライバーの能力は「経験」、ピットクルーのチーム力は「モチベーション」です。
極端なことをいえば、仮に多少「スキル」が低くても、「経験」や「モチベーション」によって成果を上げることができればそれでいいわけです。企業の人材育成は、あくまで「成果につながる人材戦力をつくる」ということを目的としなければなりません。
「スキル」に偏った見方をするのではなく、「経験」と「モチベーション」を含めた3つのどこに課題があり、どう伸ばしていくのかを判断することが、成果につながる人材育成といえます。
この3つの柱を使って、人材価値のスコアを出してみましょう。
「スキル・経験・モチベーション」を五段階で評価し、そのスコアを掛け算して算出します。たとえば、スキル4、経験2、モチベーション4の人の場合は、それらのスコアを掛け合わせた合計の「32」が人材価値のスコアとなります。
そして、この人材価値のスコアが出たら、成果を上げているかそうでないかで、マッピングしてください。
縦軸は人材価値の高低、横軸は成果を上げているかいないか。4つに分かれた空間のどこにマッピングされるかで、一人ひとりの傾向がはっきりと見えてきたのではないかと思います。
それぞれの人に最適な育成プランを見つけていく
人材価値が高く成果もあげている人はトップタレントです。
では、人材価値が低く成果を上げている人はどうか。不足している部分を明らかにして、育成してあげることで、さらに高い成果を上げることができる可能性があります。
スコアリングシートを見れば、たとえば、まだ経験が多くはないものの逆に少ない経験でスキルを獲得し、モチベーションも高いために成果が出ているのだな、といったことがわかります。こういった人材は、短い期間で経験をさせてトップタレントへと育てていくことができる可能性があります。
一方、人材価値が高いものの、成果が上がらない人に関しては、「これから成果が上がるところだと見て、今の仕事をもう少し続けさせて様子を見る」といった判断がありえます。
経験も十分あるのにモチベーションが上がっていない場合ならば、マンネリ化しているということが考えられます。これではやはり成果は出せませんが、「経験も豊富で、それに比例して能力は高い」ということは今の仕事には“向いている”のです。
こういう場合は、マンネリ化しているからといってむやみにローテーションなどで仕事を変えるのは得策ではありません。
本人の成長意欲の源泉を探り、それに近い内容のプロジェクトや役割を業務のなかで与えることで変化を促します。
では、人材価値が低くて成果が上がっていない人はどうするか。「今の仕事とは違う仕事にチャレンジできるよう、キャリアチェンジを検討したほうがいいかもしれない」といったことが考えられます。
どう判断するかはケースバイケースにはなりますが、人の価値について細かく評価していくことで、それぞれに最適な処遇や育成プランを考えることができます。