「自己肯定感」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
自己肯定感は、「どれだけ自分のことを受け容れているか」の指標です。
では自己肯定感を持っていると、どんな良いことがあると思いますか?
自己肯定感を持っていると、自分の行動の結果を認めたり、受け入れたりできます。たとえ失敗してもです。
だから、伸び伸びと生きることができます。おっかなびっくり、びくびくと生きている必要がなくなるのです。伸び伸びと生きているので、様々なことにチャレンジできます。
そして、一回や二回の失敗ではめげません。また、多少落ち込むことがあっても、その自己肯定感が素早くエネルギーを回復させてくれます。
持っている方が絶対的に得であることは分かっているのだけど、なかなか持てないもの、それが自己肯定感です。
「今の自分」にすでにすごい価値がある!
この自己肯定感を持つために大切なことの1つが「自分の価値に気づく」ということ。
私は、子どもの頃から自分の声が嫌いでした。録音された自分の声を聞くと、何ともイケていない感じがしていたのです。そのため、こんな声を持っている自分を否定し続けていました。それは、何十年間も続きました。
40代で独立をしてから、企業研修や講演など、人前でお話をさせていただく機会が増えてきました。自分の声は好きではありませんでしたが、恥ずかしくて人前で声を出せないというほどではありませんでした。
そして、この機会から、状況が大きく変わっていきました。
「三浦さん、本当に良い声ですねえ」と、頻繁に言っていただくようになったのです。
自分では、かなり意外でしたが、話す機会が増えれば増えるほど、そう言っていただくことが多くなっていきました。
実際に私の声は、研修や講演の時、かなり力強く響き渡ります。自分でもびっくりするような時もあります。普通なら、マイクのいるような大きな会場でも、マイクなしでいけてしまうくらい声がよく通るということを、主催者さんや参加者さんなどからもよく聞かせていただきます。
1対1のコーチングにおいても、クライアントさんから、「安心できる声と雰囲気があるので、何でも話せる気になる」「声が心地良く入ってくるので、自分をしっかり見つめる時間にできる」などと言ってもらえます。
コーチングというのは、“自己探索”と“自己理解”を深める場。自己理解を深めることによって、「本当にやりたいこと」など、大切なことに気づく場です。
“20世紀最高の経営者”と言われたゼネラル・エレクトリック元CEOのジャック・ウェルチが、「あなたはなぜ20世紀最高の経営者といわれるようになれたのです?」と聞かれた際、「セルフ・アウェアネス(自己理解、自分に対する気づき)」と答えたのは、有名な話です。実際に、ジャック・ウェルチは、常にエグゼクティブコーチを雇い、この自己理解をさらに深め続けていたとのことです。
このように、自己理解を深めることは、人生やビジネスの成功にとってとても大きなことで、それを促進するのがエグゼクティブコーチの役目です。クライアントさんにとっては、私の声が心地良いので、この気づきが起こりやすいということらしいのです。人気のある歌手が、歌が上手いだけではなく、その声の質が人の心を震わすので、曲がヒットするのと同じようなことなのです。
そういった意味で、私の声は、「人の潜在能力発揮の促進」という役目を全うするために、非常に価値のある自己資産であるということに、結構な年齢になってから気づかせていただいたわけです。
「何か受け容れがたいもの」から、「授けられた大切なギフト」へと、この声に対する私自身の見方は大きく変わりました。
今では、この声を授けてくれた両親に深く感謝をしながら、多くの人々のお役に立てるように、大切に使っていこうと思っています。
他人と比較することをやめよう
私のこの話は、ある意味、「本当の自己理解が進んだこと」でもあります。
自分の欠点や短所だと思っていたことが、実はまったく違った意味を持つことだったという気づき。これは“本当の自己理解”なのです。このような自己理解が進むと、自己否定をする機会がなくなっていき、“まるごと受け容れる度”が上がっていきます。
変な言い方をしますが、短所・弱みと思って見ていると、短所・弱みのままになります。それを、「自分の特徴」と見てみると、見方が少し変わり出すでしょう。
その特徴は、短所・弱みにもなり得るけれど、使い方によっては、長所・強みにもなり得ます。場合によっては、あなたにしか表現できない、あなただけの貴重な個性にもなり得るのです。
大切なのは、それを特徴・個性として受け止めること。人と比較して、ちょっと違っている自分を妙に気にしたり、卑下したりしないこと。
例えば、松の木は曲がるのが個性です。松の木のいいところは、まっすぐ伸びる杉の中で育っても、自分が曲がっていることを気にしたり、卑下したりせず、すくすくと曲って育つところです。
「みんなまっすぐなのに、自分は曲がっているから恥ずかしいなあ、ダメだなあ」とは決して思いません。
そして、悩むことなく順調に曲って育った松は、やがて堂々と立派な枝ぶりを見せることになります。
それを見ている人からすれば、「まっすぐ育つ杉もいいなあ。一方、松の木のこの何ともいえない曲がり方も味わい深くていいんだよなあ」ということになります。それぞれが、その特徴と個性を発揮しているということです。
あなたの特徴と個性をぜひ愛してみてください。そして、それを活用し続けてみてください。あなた自身を受容することが少しずつ進んでいくと思います。
※本記事は、三浦将『コーチングのプロが教える 「できる自分」を呼び覚ます一番シンプルな方法』(PHP研究所刊)より、一部を抜粋編集したものです。