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50代「化石」技術者が「神様」と呼ばれるようになるまで

江上剛(作家)

2018年07月26日 公開 2022年06月06日 更新


 

五十路の壁(3)「副業の壁」の乗り越え方

50代が副業を始めるなら

このごろ、副業を巡る議論がかまびすしい。政府もサラリーマンに副業を勧める。財界人もやや時代のさきがけのような立場にある人は副業を勧めている。

私はややひねくれているから、どうも政府などが勧めることは信用が置けないと思っている。

副業を働き方改革の一環として勧めるくらいなら、企業は副業などしなくてもいいほどの給料を社員に与えろと言いたくなる。一向に実質賃金を引き上げないで、経営者は、会社に利益を溜め込むばかりで「副業で稼げ、人脈を築け、副業で身につけたノウハウを本業で生かせ」等々、そんなうまいことばかり言うなと言いたいのだ。

副業と言っても華やかなものばかりではない。工事現場の監視、居酒屋勤務、配達業務など肉体系のものが多い。こうなると自分磨きのためではなく完全に生活のためだ。これでは疲れて、心身を病み、本業に差し支えるだろう。

しかしそうは言うものの、50代のサラリーマンともなれば、知恵を使わねばならない。次の60代、70代の人生を考えれば、さらに言えば人生100年時代(これも政府ご推薦だが)を考えれば、真剣に副業に向き合うことも必要になる。

ここで絶対に陥ってはいけないのは、「カネ」のため、すなわち収入増加だけのために副業をしてはならないということだ。

株やビットコインなどの投資の誘いが多い。これもよくよく考えた方がいい。「億り人」という大儲けした人がもてはやされるが、自分も一発当ててやろうと思っていると、本当に全財産をなくし、地獄へ「送られ人」になってしまう。

アパート経営などもしかりだ。とにかく安易に金儲けをしようとセコイ根性を出したらイケナイということだ。もう50代なんだから、若い頃のように失敗は許されない。

要するに他人の口車に乗せられるな、自分で苦労して道を拓けということだ。副業だって客がいる。そのためにはいい加減なことは許されない。ましてやあなたは50代で人生、会社経験も豊富なのだから。とにかく自力、独立独行、この精神で副業に取り組もう。
 

やりたくてもやれなかったことを副業にせよ

では何を副業にすべきか。それは、これまであなたが培ってきた「スキルの棚卸」や「名刺(人脈)の棚卸」などで自分がやり残したこと、会社勤務中にやりとげたいと考えていることを洗い出し、それを副業にすべきなのだ。

例えば、あるアイデアがあったとしよう。あなたは何度も上司に提案したが、それは拒否されてしまった。それをなんとか実行に移せないか。それを副業にできないか。もしうまく行けば、ゆくゆくは本業にできないか。幸い会社は副業を勧めている……。

もし副業禁止なら妻名義でやるとか、ちょっとリスクを取らねばならないかもしれないが、そのアイデアを軌道に乗せるには50代が最終期限だろう。60代なら会社はリタイアしている。それまでに副業を軌道に乗せ、第二の人生に活用したいからだ。

余談だが、私は、若い人にはどんどん上司にアイデアを提案しろと言っている。それは間違いなく否定される。それでも諦めずに一年後、二年後に再び提案する。その時は、もっとアイデアを練り込んでおく。とにかく一度や二度は拒否されるのが当然なのだ。それでも捨てずに、諦めずに持っているアイデアが本物なのだ。

そんな蓄積してきたアイデアを、いよいよ50代になって副業として実行に移せばいい。資金がいるなら銀行に相談しよう。銀行が駄目ならネットでクラウドファンディングを使って資金を集めよう。

あるクラウドファンディングの会社に取材すると、1件当たり平均100万円で資金を集める依頼が、1日1000件もサイトにアップされるそうだ。

競争は激しい。この中であなたのアイデアはさらに磨かれることだろう。そして他人の資金で副業を始めた以上、あなたを信用してくれた人に対する責任を果たさねばならない。あなたは意欲的になり、それは本業でも生かされることになる。

「君、最近、見違えるように元気だね。何かいいことがあったのか」と上司はいぶかしむだろう。

「はい、恋をしています」とあなたは彼に言ってやりなさい。上司は目を白黒させるに違いない。

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