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行列の香港点心が激安580円なのにミシュラン星つきの理由

永井孝尚(マーケティング戦略コンサルタント)

2018年12月06日 公開 2024年12月16日 更新

<<「よいものを安く売って儲ける」ことは、実はとても難しい。「安く売って儲ける」のと「安売り」は、一見似ているが、実は正反対だ。

「安く売って儲ける」ためには、徹底的に「やらないことを決める」戦略が必要だ。このようなことを考えずに、場当たり的に「売れないから、値引きして売ろう」と考えると、安売り競争の泥沼にはまり込み、なかなか抜け出せなくなる。だから価格競争で苦しむのである。

本稿では、マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏が、M・ポーターの「コストリーダーシップ戦略」を元に利益を確実に確保するための価格破壊の方法を紹介する。>>

※本稿は、『なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』(PHP新書)の内容を元に一部再編集したものです。

 

香港点心ティム・ホー・ワンに行列が絶えない理由

世界中のレストランを厳選して星の数でランク付けするあのミシュランガイドで、一つ星を取った香港点心が、2018年の春、東京に開店した。とても美味しくて激安らしい。

早速行ってみた。日比谷にある「ティム・ホー・ワン」だ。

平日午前、雨にもかかわらず開店30分前には40人の行列が出来ていた。並んでいるとメニューと注文票を渡された。並んでいる間に注文を決める仕組みである。開店時間になった。入口で注文票を渡し、数十名の客は次々と席に案内された。

一品目「ベイクドチャーシューパオ」は、着席わずか5分後に届いた。「早っ!」。

チャーシューをメロンパンのような生地で包み、肉まんの大きさに仕上げた一品。生地はカリカリ、甘い醤油味のチャーシュー餡も染みていて美味い。これが3個で580円だから、1個200円弱。コンビニの高級肉まん並みの価格である。その後も注文したメニューが5分間隔で届く。一通り堪能して満腹になり、お勘定をすると2000円だった。内容は4000〜5000円の高級点心クラス。安い。安すぎる。

「この美味しさで、この値段。なぜこの価格で売れるのだろう?」。店を出て、早速リサーチしてみた。

ティム・ホー・ワン創業者の一人、マック・クァイ・プイさんは15歳で点心の世界に弟子入りした。フォーシーズンズホテル香港内にある高級広東料理店「龍景軒」の点心師に抜擢されたのち、独立。翌年には1つ星を獲得した。

より安い値段で提供するため、高級な食材や調味料は一切使用せず、材料はスーパーでも買えるものを使用しているという。「技術と経験さえあれば、どんな素材でも美味しくできる」というのがマックさんの考え。そこで味付けには徹底的にこだわった。数え切れないほど試行錯誤した末、2カ月かけてレシピが出来上がったという。さらに店舗の運営も徹底して効率化し、より低コストでたくさんのお客さんに対応できるようにしている。

マックさんのおかげで、お客さんは誰もが幸せそうだ。

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200円ショボ弁当と550円充実弁当が、同じ材料費のナゾ

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