行列の香港点心が激安580円なのにミシュラン星つきの理由
2018年12月06日 公開 2019年04月03日 更新
やらないことを決め、価格破壊を実現するコストリーダーシップ戦略
単なる安売りはお客さんを失望させ、企業の体力を消耗させる。しかし安く売ること自体は、決して悪いことではない。「よい商品が安く手に入る」ことは、私たちの生活を豊かにする。そのためには、ティム・ホー・ワンや旬八のように、よい商品を安く売っても、ちゃんと利益を確保できる仕組みを作ることが必要だ。
競争戦略を提唱した経営学者マイケル・ポーターは、ライバルよりも徹底的に低コストにすることにより、競争で有利に立つ戦略を「コストリーダーシップ戦略」と名付けている。ポーターはさらに、「戦略とは、やらないことを決めることだ」と述べている。
ティム・ホー・ワンも旬八も、やらないことを明確にすることで、コストリーダーシップ戦略による価格破壊を実現している。
ティム・ホー・ワンは、創業者であるマックさんの「より安い値段で、たくさんの人に、美味しい点心を食べてもらいたい」という想いが原点だ。旬八は、創業者である株式会社アグリゲート・左今克憲社長の体験が原点だ。
左今社長は学生時代、「農業と消費者をつなげて、農家も都市の食生活も豊かにできないか?」と考えた。そして農家から規格外の野菜や果物を直接調達することで、激安でもすべての関係者が儲かるビジネスを創り上げたのだ。
いずれも、まずは「やりたいこと=顧客にどんな価値を提供したいのか」を考え抜いた。
それまで当たり前だった常識に疑問を持ち、「やらないこと」を決めた。
そして新しい仕組みを作り出し、価格破壊を実現したのである。