「押し入れ5つ分」の収納容量をどう使うか
ご自宅の「収納率」をご存知ですか? 収納率とは、住宅の床面積に対して、収納面積の比率のことです。マンションで8%以上、戸建てで11%以上あれば安心と言われています。一般的なマンション75㎡で、天井高が2.4mとすると、家一軒の体積は180㎥になります。
これを単純に収納率8%に当てはめて考えると14.4㎥分の収納が確保できます。14.4㎥がどのくらいの容量か想像がつきますか?
押入れ一間+天袋=3㎥ですので、およそ押入れ5つ分です。
110サイズ(約0.0513㎥)の段ボールで考えるとおよそ280個分です。
けっこう入るなぁ!と思いますよね。ところが、これだけ多くの物を管理して無駄なく使っていくという視点で見るとどうでしょう? 280個の段ボールの中身はおよそ4,000個の物が入っています。収納から物がはみ出ているお宅では、4人家族で10,000個以上になります。
さて、あなたの会社に5,000〜10,000個の在庫のコントロールを任せられる人は何人いますか? 職場環境整備研修で入る会社では、10個単位の在庫コントロールもままならないという状況はめずらしくありません。片づけられない妻であれ、誰であれ、多くの物を管理し使っていくのは大変なことです。
それを誰でも管理し使えるように設計していくのが空間マネジメントです。
Mさんのお宅の収納率は13%でした。家を買うときに片づけられない妻のために収納が大きいことをポイントに選んだそうです。収納が広ければ片づくだろうと期待してのことでしたが、収納が広ければ物も増えるということを痛切に感じられたそうです。
それでも、ここでMさんは、標準よりも収納が大きい分、多少物が多くても、標準的もしくは、標準以上の生活を組み立てることが可能だと希望を持ちました。
「出す→分ける→選ぶ→しまう(仮収納)」で使いやすい家に
設計図を完成させたあとは、実際に「出す→分ける→選ぶ→しまう(仮収納)」というステップを、ご自身の小さなエリアからはじめてもらいます。小さなエリアとは、財布やカバン、デスクの引き出しひとつからです。
「出す→分ける→選ぶ→しまう(仮収納)」のステップは、まず対象となるエリアの物をすべて見える場所に出します。そして物品ごとに分類。この時のポイントは、感情を入れず、ドラッグストアやスーパーマーケットのように、用途によって分けていくことです。
その中から「生活に必要な物」「自分が好きな物」を選び、分類したものが混ざらないように収納エリアに戻します。ここは「仮収納」と考え、きれいな空箱や紙袋などに入れるだけでかまいません。分類から外れたものは、捨てずにまとめて置いておきます。
まずは1ヶ月ほど、生活の中で置き場所を試行錯誤します。本格的な収納用品を買うのは、それが終わった後がよいでしょう。
ご自身の小さなエリアでステップを身につけた後は、家族共有の場所を片づけましょう。最初は毎日家族が使う「洗面所」がオススメです。洗面所は行動・広さ・収納・置く物が限られているためマネジメントしやすく、家族全員がきれいに快適になったことを実感しやすい場所だからです。
Mさんも時間のある週末に1ヶ所ずつ、設計図通りに片づけを進めました。もちろん修正もありますが、収納用品や収納家具に頼らない片づけをしているので、修正にも戸惑いはありません。
プロでも最初からそのお宅の正解を見つけることは難しいのです。片づけはじめてすぐに正解を出せるわけではなく、トライ&エラーを繰り返し、PDCAを回しながら、物が管理しやすく使いやすい家を完成させていきます。