<<ゆったりした空間で一日の疲れを癒やす――ビジネスパーソンにとって自宅は休息の場であってほしいもの。しかしそんなやすらぎの場であるはずの自宅がモノの散乱した修羅場だったら……。
「近年は片づけができない妻に悩み、相談に来る男性が増えた」と話すのは、独自のメソッドを生み出し、法人や個人に収納カウンセリングや整理サービスを提供している杉田明子氏。学校の副教材として採用された『中高生のための「かたづけ」の本』(岩波ジュニア新書)の著者でもあります。
杉田さんが相談者に伝えるのは「妻に片づけをさせる方法」ではなく、「男性自らがラクに楽しく片づける方法」。もともと空間認識力が高い男性は片づけ適正を持つ方も多く、杉田さんのレクチャーで人生を大きく変えた例をご紹介します。>>
片づけは家事ではなく“空間マネジメント”
「片づけくらい自分でやるのが当たり前」。片づけられない妻に悩み、一時期離婚まで考えていたMさんも、そう思っている一人でした。
プロの存在は知っていたものの、お金をかけて妻がまた散らかしたら元の木阿弥……。そんな心配もあり、プロへの依頼に踏み切れませんでした。
じつは、散らかりきってしまった家の片づけや、引っ越し時の収納整理は、日常的にする掃除や後片づけの家事とは異なります。家の中の物の総量を把握し、人の動きに合わせ、物の適材適所を決めるという、家の「空間マネジメント」が必要です。
この空間マネジメントがうまくできていないと、物が収納場所から溢れ出し、片づけられずに、家だけでなく、住人の生活そのものが乱れてしまいます。家事のしにくい収納は、家事の時間を増やし、探し物や余計な物の購入で日々の生活ストレスが増して、家族の人間関係もギスギスしていきます。
私が提唱している片づけ技術「幸せ収納(R)」は、13年間の航空会社勤務時代に身につけた技術がベースとなっています。当時の私の仕事は、航空機の限られた狭い空間に、国際航空貨物を搭載する指示書を作成し、年間約500便のフライトをコントロールするというものでした。
そこで身につけた技術は、安全管理、時間管理、業務効率化、臨機応変力、そして空間認識力です。これらすべてを一般企業の環境整備、家庭の片づけに応用しています。
空間認識は、女性よりも男性の方が得意といわれています。実際に、私の空間マネジメント技術は男性に伝わりやすく、「片づけで大切なのは、体積を知ることと接地面を整えることです」と言うと、女性はポカンとされますが、男性はすんなり納得します。
ですので、男性には最適に使える家空間の設計図を作ることから始めています。その上で設計図に沿って実際の片づけに移ります。