「ちょっといい?」で時間を奪う上司…上手に"スルーする”3つのポイント
だれもが知る古典は、じつはライフハック、マネジメント、生き方まであらゆる成功法則が詰ま った“最強のビジネス書"だった!?
23万部突破「問題地図」シリーズの生みの親・沢渡あまね氏と、ベストセラー多数の人気国語講 師・吉田裕子氏が、不朽の古典名著『徒然草』を現代の観点から読み解き、日本の企業や社員の 問題点とその対処法をあぶり出すという意欲作『仕事は「徒然草」でうまくいく 【超訳】時を超 える兼好さんの教え』を発表した。
各段のエッセンスを吉田氏が超訳し、沢渡氏が徒然草原文を現代職場のあるあるシーンに置き換 えることにより、国語や歴史で暗記させられた『徒然草』が現代の企業社会に生きる我々にリアル に”刺さる”ものとなっている。ここではその一部を紹介したい。
※本稿は沢渡あまね・吉田 裕子著『仕事は「徒然草」でうまくいく 【超訳】時を超える兼好さん の教え』(技術評論社刊)より一部抜粋・編集したものです
『徒然草』189段の現代版~悪気なく訪れる、集中力と時間をうばう邪魔者たち〜
「今日は、提案資料を完成させる! やるぞ!」
そう意気込んだあなた。しかし、いざオフィスに出社すると罠がいっぱい。
朝から代表電話が鳴りまくる。ううん、勘弁してもらいたい。資料作成に集中したいので、だれか出てほしいな。やっぱり、だれも出ない。仕方ない、出るか。……なんだ、まちがい電話か。
ええと、これから何を書こうとしていたんだっけ? 思い出せないや……
そうそう、思い出した! 技術のトレンドについて書こうと思っていたんだ。よし!
「ちょっと、いい? 至急でお願いしたい仕事があるんだけれど」
課長が優しく邪魔をする。ええ、またですか? この課長、いつも至急の案件ばかりで疲れるんですけれど……。はいはい、わかりました。やりましょう。
ふう、やっと終わった。と思ったら、今度は部長が向こうの応接室から手招きしている。
「設計部と会議しているんだけれど、あなたにも一応出ておいてほしいと思って」
一応って何ですか? 出番がなさそうなら、作業に集中させてほしいんですけれど。
……まあ、とりあえず、参加するしかないか。
ああ、ようやく解放された。結局、自分がいる意味のまったくない会議だった。せめて、ノートパソコンを持ち込んで、内職で作業を進めればよかった……。おっと、またまた課長がニヤニヤ顔で近づいてくる。危険だ……。
「提案の資料、できた?」
できてるわけないじゃないですか! 冗談も休み休み言ってください!
・電話対応、問い合わせやクレーム対応
・突発案件、飛び込みの仕事
・突然の来客
・いきなりの会議召集
さまざまな邪魔者が、私たちの本来の業務の手を止めさせて、悪気なく集中力と時間を奪います。気がつけば、計画した仕事がまったく進んでいない!
業務をさえぎる罠の数々、やりすごす(対応する)ための3つのポイント
しかし、残念ながら仕事とはそういうものです。不確実性にどう向き合って、どう対応するか? ここにマネジメントの本質があります。仕事をマネジメントするためのポイントを、三つ紹介しましょう。
(1)仕事を見える化して共有する
あなたが持っている仕事を書き出して、相手に見えるようにする。仕事をマネジメントできる人は、率先して自分の持っている仕事や、繁忙状況を見せています。
もともと持っていた仕事、突発の仕事、これらをたとえばふせんに書き出して、自分のデスクの横の壁に貼り出す。それだけで、どれだけの仕事を抱えているのか、視覚的に説明しやすくなります。
全体像が見えます。また、上司や同僚から仕事を頼まれた時、その場でやる/やらないや、優先度をいっしょに判断しやすくなります。
相手は、あなたの仕事の状況がわからず、悪気なく突発の仕事を依頼したり、会議の参加を促したりします。そして、悪気なく「え、あの仕事まだ終わっていないの?」とがっかりします。
(2)バッファ(余裕しろ)を積む
組織で仕事をしている以上、どうしても突発の案件や飛び込みは発生します。突発ゼロ、飛び込みゼロで計画を組むのは、楽観的すぎるでしょう。
「必ず邪魔は入る」「計画は変わるもの」
この割り切りで、あらかじめスケジュールにバッファ(余裕しろ)を組み込んでおく。これも大事なマネジメントです。
(3)集中できる環境を作る
邪魔者が入らない環境を作る。それだけでも、不要不急な声がけや、打ち合わせに巻き込まれるリスクを回避できます。
・朝早くに出社する
・別室に篭もる
・自宅やカフェでリモートワークする
私は、執筆に集中したい時、ダム際でクルマに篭もって、もくもくと作業することがよくあります。大好きなダムと自然を目の前にリラックスして、人目も少なく仕事に集中できます。
携帯電話の電波がつながりにくいため、電話による割り込みもありません。イラっとしたメールが来ても、森の中で深呼吸。ココロ穏やかに対応できます。すなわち、アンガーマネジメント(怒りの感情と向き合う行動)ができます。
また、IT業界には仕事をマネジメントするためのフレームワーク(枠組み)があります。
・プロジェクトマネジメント
・インシデント管理
・変更管理
これらを学習して実践するだけでも、あなたの職場のあたふた景色を変えることができるでしょう(私が書いた『仕事の問題地図』『業務デザインの発想法』なども参考にしてください)。
計画は生き物です。不確実であり、時に変更や軌道修正をしながら進めていく必要があります。そして、マネジメントとは「不確実性に向き合ってやりくりする取り組み」と言っても過言ではありません。マネジメントをしましょう。