だれもが知る古典は、じつはライフハック、マネジメント、生き方まであらゆる成功法則が詰まった“最強のビジネス書"だった!?
23万部突破「問題地図」シリーズの生みの親・沢渡あまね氏と、ベストセラー多数の人気国語講師・吉田裕子氏が、不朽の古典名著『徒然草』を現代の観点から読み解き、日本の企業や社員の問題点とその対処法をあぶり出すという意欲作『仕事は「徒然草」でうまくいく 【超訳】時を超える兼好さんの教え』を発表した。
各段のエッセンスを吉田氏が超訳し、沢渡氏が徒然草原文を現代職場のあるあるシーンに置き換えることより、国語や歴史で暗記させられた『徒然草』が現代の企業社会に生きる我々にリアルに”刺さる”ものとなっている。ここではその一部を紹介したい。
※本稿は沢渡あまね・吉田 裕子著『仕事は「徒然草」でうまくいく 【超訳】時を超える兼好さんの教え』(技術評論社刊)より一部抜粋・編集したものです
『徒然草』58段の現代版~転職した同僚がうらやましい~
一緒に働いていたB子さんが、先進的な企業に転職したと聞き、元同僚の二人は、体調不良を装って午後半休を取り、B子さんのオフィスを尋ねた。Tシャツにジーンズ姿で、楽しそうに近況を語るB子さん。なにもかもが眩しい。
「なんていうかね、Webエンジニアとしてリスペクトされている感じがするのよね」
余計なことは考えなくてよし。ひたすら、Webエンジニアとしての仕事に集中できる。生産性も上がると、B子さんは付け加えた。
帰り道。あまりのショックに、肩を落とす元同僚の二人。
「なんか私たちって、『作業者』扱いされてる感じがするよね」
「わかる。デスクは狭いし、モニターも小さくて仕事しにくいし……」
「せめて、切れかかった蛍光灯くらい、きちんと取り替えてほしいよね」
二人のため息は、尽きない。
経営者が「削減すべきコスト」と「必要な投資」を見誤ると社員は逃げ出す
「問題地図」の沢渡です。コストを削減したい気持ちもわかります。しかし、削減一辺倒はいかがなものでしょうか?
私は、200を超える職場で、「生産性」「働き方」をテーマにした講演やワークショップをしてきました。いずれの職場でも、生産性やモチベーションを下げる要因の一つに「環境」を挙げる人は少なくありません。
・パソコンが低スペックで、仕事が捗らない
・ホワイトボードがない
・休憩できるスペースがない
・電話が鳴りまくって、仕事に集中できない
・トイレが少ない
・デザイナーなのに、モニターが一枚しか与えられず、しかも画面が小さい
・ネットワークエンジニアなのに、なぜかスーツとネクタイで出社しなければならない
・イノベーション担当なのに、ツイッターもユーチューブも閲覧できないし、社外とのファイル共有もすべてNG
このような職場環境で、働く人の生産性や、モチベーションが上がるでしょうか?
「無駄遣いをせよ」とは言いません。しかし人は、お金や時間をかけてもらえないと、リスペクトされていないと感じる生き物です。プロとしてリスペクトされない職場に、優秀な人、熱量のある人は集まらないし、育たないでしょう。
あなたの職場、「コスト削減」の名のもとに、働く人たちのモチベーションと、組織の成長機会まで削減していませんか?