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ノーベル賞経済学者の危惧「わずかな富裕層が政治を支配する未来」

ポール・クルーグマン(プリンストン大学教授),大野和基〔聞き手〕

2019年09月27日 公開 2024年12月16日 更新

格差の拡大、一部の超富裕層への富の集中……変わりゆく世界のゆくえを、ノーベル賞経済学者はどう見ているのか?――ニューヨークの彼のオフィスで聞いた。

※本記事は大野和基インタビュー・編『未完の資本主義 テクノロジーが変える経済の形と未来』(PHP新書)から抜粋して編集したものです

 

富の不均衡が救済される可能性もある

――この数年、世界中で格差の拡大が問題になっています。あなたは前回のインタビューで、富の集中を防がなければならないと述べていましたね。

【クルーグマン】富の極端な集中は避けなければなりません。社会的にも政治的にもネガティブな影響を及ぼすからです。大事なことはセーフティネットがあり、すべての人に基礎収入を保証することです。その一部の資金は富裕層に税金をかけることでまかなえます。

現在のアメリカの失業保険は、前職の給与30%分を6カ月間支給という非常に限られた補償額でしかありません。これでは暮らしていけず、格差は広がるばかりです。ただ、前回のインタビューでも述べましたが、失業率の高さはAIに仕事を奪われたからだというのは思い込みです。現実にはそんなことは起きていません。

現在、我々は2つに分かれる分岐点にいます。1つの道は、寡頭政治です。つまり、ひと握りの富裕層が巨大な富をシェアしている状態に向かう。彼らはうまく政治を支配しています。もし富の極端な集中が民主主義と折り合わないとすれば、後退するのは民主主義のほうかもしれません。極端なエリート社会になる恐れがあります。

一方で、この不均等を救済する措置が生まれ得るとも思います。私は、1960年代から70年代にかけて、中流階級で育ちました。この中流階級というのは、自然発生的に湧き起こったものではありません。30年代、40年代の政治活動によってつくり出されたものなのです。

アメリカだけではなく、多くの豊かな国でもそうでしょう。それがもう1つの道です。我々は、この道を進むこともできます。ただ、未来はかなり漠としたものです。

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