フランス人に学びたい「自分の基準」のもち方
しかし、悲観してばかりではいられません。そんな厳しい時代に、私たちはどう暮らしを守っていくべきかを考えなくてはいけません。
答えは、とにかく「徹底的にお金を使わない」。これに尽きます。9月を振り返ってください。駆け込み消費が少なかったでしょう。国民の多くが、もはや「買う力」を失っている証拠です。
私は、「ピンチをチャンスに」ではありませんが、消費増税を機会に家計をガッチリと締めることをお薦めします。
ビジネスパーソンならば将来に備えて、拙著のタイトル『年金だけでも暮らせます』(PHP新書)のとおりの暮らしの状態を、これを機につくればいいのです。そうすれば、ゆとりある楽しい老後を過ごせます。
同書でも書きましたが、要らない支出は切ればいいのです。たとえばスマホ、携帯電話。毎月の通信費を削れる余地はないだろうか。それと交際費。
もちろん、人生の愉しみの一つである「交際」を辞めろとは言いません。しかし、皆が金銭的余裕がないのですから、お金がかからない付き合い方を考えればいい。
若い人ならば、業務用スーパーを訪ねて安価で食材を買い込んでバーベキューに興じるのもいいでしょう。また、年を重ねたシニアは、そんなに食べたり飲んだりしないでしょうから、削りようがある。
もちろん、お金がある人は、存分に使えばいい。しかし、将来に不安を抱えているのならば、本誌2018年5月号でもお話ししたように、「ゴルフクラブから鍬へ」を意識して、作物をつくったり内職をしたりして、支出ではなく収入を増やす方向にシフトすべきです。
その意味で、私はフランス人に見習うべきだと思うのです。彼らは「ケチ」な国民性といわれますが、それはお金がないというよりは、他人に流されないから。
数年前、『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・L・スコット著、神崎朗子訳、大和書房)という本が流やりましたよね。
なぜ、お洒落な彼らが服を必要以上に買わないかといえば、「私はこの服が好きだから、他には要らない」とキッパリといえるからです。つまり、自分のスタイルをしっかりともっている。
だからフランス人は、新しいものだからといって簡単には釣られません。向こうで働く私の知人が不動産屋を訪ねて借家を探したとき、「築50年の家しかアキがない」といわれたそうです。
日本人の感覚ならば「やはり新築が人気なんだな」と思うでしょうが、じつはその逆。彼らは、築200年や300年の家に住むのが当たり前なのです。
日本社会をみていて危ういと感じるのは、企業やメディアの刷り込みによって、国民が「自分の基準」を失っていることです。新築好きの人がいるのはいいのですが、それは必ずしも「正解」ではない。
そう言い切れる姿勢がないと、「本当に自分に必要なものは何か」を考えずに思考停止に陥り、気付かないうちに無駄な支出を繰り返しているのです。