<<「年金不安」を煽る風潮に真っ向から反論するのは、経済ジャーナリストの荻原博子氏。
自著の『年金だけでも暮らせます』では、年金に対して正確な情報を持ち、制度と知識をフル活用してけば老後の心配のいらないと語りつつ、年金を目減りさせずトクをする様々なお金のテクニックを示している。
本稿では同書において、定年後に上手な働き方をすることで次第で年金額を増やす方法を示した一節をここで紹介する。>>
※本稿は荻原博子著『年金だけでも暮らせます』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです
※本稿で紹介する年金制度に関する情報は、2018年12月時点のものであり、変更になる場合があります
定年後に年金をカットされない裏ワザ
60歳以降も働くという意欲的な人は、多いと思います。ただし、注意も必要です。
60歳以降も働く場合、収入によっては年金がカットされます。カットされないためには、年金と合計額を考えながら働くといいでしょう。
まず、年金と給料(総報酬月額相当額=月給+ボーナスの合計額の
12分の1)の合計が28万円を超えると、年金は一部カットされます。図表でもわかるように、厚生年金の支給開始年齢は、65歳に引き上げられている途中です。
【特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢】
男性の場合、昭和36(1961)年4月1日生まれまでは、65歳以前でも、報酬比例部分と言われる特別支給の「老齢厚生年金」がもらえます。
ところが、年金と給料の合計額が28万円を超えると、この部分の年金の一部がカットされます。
老齢厚生年金をカットされない裏ワザは、働く時間を正社員の4分の3未満にしてもらい、正社員から外れることです。
正社員から外れて社会保険に加入しなければ、給料と年金の合計が28万円を超えても年金はカットされません。
例えば、正社員の時の給料が30万円だったら、仕事時間を4分の3未満にしてもらい、給料も4分の3未満の22万円に下げてもらう。そうすれば、特別支給の老齢厚生年金が65歳まで月10万円あっても、給料22万円+年金10万円で月32万円がもらえます。
さらに、この場合、60歳時点の給料30万円が22万円に下がっているので、「高齢者雇用継続給付」が出ます。
「高齢者雇用継続給付」は、賃金が60歳時点の75%未満になったら出る給付金で、給料の低下率によって支給率が変わります。このケースでは、3278円が給付されます。これをプラスすると32万3278円になります。
ただし、2016年10月1日からは、従業員501人以上の企業に勤務する方で、週の所定労働時間が20時間以上で一定の要件を満たしている方
は、社会保険が適用されるので、年金がカットされることもあります。
金額的には、それほど大きなプラスにはならないかもしれませんが、働く時間が4分の3になっているので、その分、ムリなくゆっくりと働けるということ。雇う側にとっても、社会保険料を半額負担しなくてもいいのですから、悪い話ではないでしょう。
ただし、厚生年金ではなくなると、会社の健康保険も、国民健康保険に変わります。在職中は保険料の半分を会社が負担してくれましたが、国民健康保険は全額自己負担になります。
さらに、会社によっては退職の手続きを取ると、その時点で退職金を受け取らねばならず、「雇用延長」で働く場合は、予定より退職金が減額されるというケースもあるので、自分の会社はどうか、事前にしっかりチェックしておくことが大切です。