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両目の見えない女性に“即プロポーズ”…8年待ち続けた男性の「本心」

山田清機(ノンフィクション作家),〔撮影〕尾関裕士

2019年11月09日 公開 2022年12月19日 更新

 

「わかった。じゃあ結婚しよう」

孝幸は白杖をついて現れた道下を、待ち合わせ場所近くの建物の二階にあった喫茶店にエスコートした。それが視覚障がい者を介助する、生まれて初めての経験になった。孝幸が言う。

「彼女に会うのは8年ぶりでしたが、やはりビビッときてしまいました。もちろん、8年のあいだに何人かの女性と交際しましたが、やはり別格だなと」

道下は、孝幸の反応をどう受け取ったのだろうか。

「この人、目が見えないってことを本当にわかっているんだろうか、私がどんな生活を送っているのかイメージできているんだろうかって思いました」

道下が孝幸に言った。

「私、両目が見えなくなって盲学校に通っているんですよ。わかりますか?」

孝幸が言った。

「わかった。じゃあ結婚しよう」

道下は「意味わかりませんよね」と言って笑うのだが、この再会を契機としてふたりは交際を重ね、2009年、本当に結婚してしまったのである。

私は、ふたりが結婚の意思を固めた際の、孝幸の両親の反応が知りたかった。孝幸が言う。

「もちろん最初は、目の見えない人なんて大変なんじゃないの、という反応でした。でも私には、一度会えば絶対にわかってくれるという自信がありました。実際に会って話をした後、両親が彼女についてマイナスなことを言ったことは一度もありません」

ふたりは、孝幸の地元である福岡に新居を構えることになった。左目でわずかに光を感知できる道下は、買い物から料理まで、家事の大半をひとりでこなしている。

料理には黒と白、二枚の俎板を使う。白っぽい食材は黒い俎板に、色の濃い食材は白い俎板にのせると食材の輪郭がはっきりする。その輪郭を頼りに包丁を入れていく。孝幸が言う。

「自分の家の中や馴染みのスーパーマーケットなど、どこに何があるかがわかっている場所であれば、日常生活に何の支障もありません」

それにしても孝幸は、道下のいったいどこに「ビビッときた」のだろう。

「笑顔、ルックス、声もいいし、人なつっこくて誰にでも話しかけるし、真面目だし……。そう、ひねくれてるところがまったくないところですかね」

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