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"脳の使い方"に違いが…医師が見つけた、長寿の人に共通する「ある職業」

霜田里絵(医師・医学博士)、鬼塚忠(作家エージェント)

2020年02月18日 公開 2022年07月04日 更新

 

脳科学から解き明かす「画家はなぜ長生きなのか?」

(鬼塚)どうしてそのようなことができたのでしょうか? 

(霜田)私が感じるのは、人生の経験が増えていくことで、より「感性」や「思考」にも深みが増し、かつ自身も伴って成長し続けられたことが大きいと思います。

「もう、これでいい」という終わりの線引きを自分からやらない。感性や思考が豊かになればなるほど、脳の使い方も活発になるものです。逆に、脳の使い方が活発になるからこそ、感性や思考も豊かになる……それぞれが相乗効果を生み出しているのです。

(鬼塚)長寿だった一流の画家たちは、まさに人生を生ききったのでしょうね。どうして画家たちは長く生き、最期まで情熱を燃やし続けることができたのでしょうか?

(霜田)私の専門分野として、画家の長寿を脳科学的に捉えるならば、「テロメア」がヒントになると考えます。

テロメアとは2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士を中心として研究が進んでいるもので、細胞の中にある染色体の端に存在すると言われています。

テロメアは細胞分裂を繰り返すたびに短くなっていきますが、逆にその長さを延ばすことが出来れば老化を遅らせることが出来ます。

テロメアの長さはDNAを構成する塩基対の数で表され、生まれた時は10000塩基対あったのが、35歳で7500になり、65歳で4800となります。これが2000塩基対になるとこれ以上細胞分裂できなくなります。

(鬼塚)なるほど。医学的に見るならば、画家たちの脳はこの塩基対の数が減らないということですね。

(霜田)その可能性はありますね。普通に生活しているだけなら、テロメアは細胞分裂と共に短くなっていくのですが、ブラックバーン博士らの研究によると、染色体の末端にあるテロメアは、様々な要因によって伸びることもあるようなのです。

 

加齢による萎縮が最小限に抑えられていた、横山大観の脳

(鬼塚)短くなるテロメアは、どうすれば伸びるのですか?

(霜田)そこには生活習慣や精神状態が大きく関与しているようです。より質の高い生活を心がけることが大切ではないでしょうか。心のあり方や脳の使い方、ライフスタイルによって、その長さが変わることも複数の研究から知られています。

そこに長寿の大きなヒントがあると私は思っています。

実際、1958年に89歳で逝去した横山大観の脳は東京大学医学部で保存されていますが、病理解剖を執刀した吉田富三郎教授によれば、加齢により進む脳の萎縮の程度が60歳前後で、重さも日本人男子の平均を上回り、血管には動脈硬化は見られなかったそうです。脳は驚くべく若さを保っていたということです。

(鬼塚)面白い! 画家が長寿かつ最期まで充実した生活を送れるのは、テロメアを長く保てる何かが鍵を握っている、ということですね。世界的に著名な一流の画家たちが、なぜ長寿なのかを見つめることによって、それらが解明できるのではないか。霜田先生の視点がユニークであり、とても刺激的です。

でも、そのような一流の長寿画家たちの生き方や考え方を、私も含めた一般人が実践することはできるでしょうか?

(霜田)私はできると思います。日々の考え方や暮らし方の目線を変えるだけで、脳は限りなく活性化されていくでしょう。

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