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アメリカ国民の4割が進化論を否定!?…政治をも動かす「宗教の力」

西山隆行(成蹊大学法学部教授)

2020年03月04日 公開 2022年01月26日 更新

 

税・医療保険・環境保護、さらには対外政策も「宗教問題」

一般には宗教とは関連が薄いと思われがちな争点についても、宗教と関連づけて議論されることがある。税をめぐる問題はその一例である。

アメリカでは小さな政府の立場をとる人が相対的に多く、増税に対する反発が強い傾向にある。

その根拠として、宗教をあげる人もいる。ユダヤ教やキリスト教では収入の1割を神の世界である教会に寄付することが推奨されることがある(10分の1税)。神に対する奉仕が1割であるにもかかわらず、地上の権力に10分の1より高い税を支払うのは許容できないという立場である。

医療保険制度改革に際しても、宗教問題がしばしば顔を出す。

日本やカナダと異なり、アメリカでは国民皆医療保険が公的に制度化されていない。そのため、アメリカではしばしば国民皆医療保険制度の導入を目指す改革が試みられるが、反対派の中には、その根拠として人工妊娠中絶問題をあげる人がいる。

医療保険の恩恵を受けるための条件として医療機関に中絶手術を強制しようとしているのではないかとの疑念が呈されたり、中絶やアフター・ピル処方などの避妊処置のための費用負担を加入者が強いられるのではないかとの懸念が示されたりして、そのような試みに反対する人々の活動が議論を複雑にしたのである。

環境危機や地球温暖化問題も宗教問題と位置づけられることがある。

日本やヨーロッパでは、人間の活動が環境危機や地球温暖化の原因となっており、問題を解消するためには人々の行動を改めることが重要だと認識されるのが一般的である。

だが、アメリカの宗教右派の中には、環境変化は神の大いなる意思による帰結であり、人間の努力によって地球環境を変化させることができるという「人間中心主義」の考え方は神の怒りを招くと批判する者がいる。また、環境災害は終末の接近の予兆であり、キリストの再臨を予示するものとして、むしろ好ましいと主張する者もいる。

対外政策についても同様である。

アメリカ政府の資金援助を受けている団体に対し、中絶手術の実施や中絶につながる行為(相談などを含む)や、家族計画に関する教育・啓発活動を禁じることが国内外を問わず求められることがある。

宗教右派の中にはイスラエル支援に積極的な人が多い。それは、キリストの再臨のためにはユダヤ人がパレスチナを支配する必要があるという、キリスト教シオニズムと呼ばれる考え方を背景にしている。

中東問題に関し、アメリカはイスラエル寄りの立場をとることが多いとしてイスラエルロビーの影響力の強さが指摘されているが、そのような活動に賛同するキリスト教信者もいることが、アメリカのイスラエル寄りの政策を導いているのである。

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