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アメリカ国民の4割が進化論を否定!?…政治をも動かす「宗教の力」

西山隆行(成蹊大学法学部教授)

2020年03月04日 公開 2022年01月26日 更新

 

LGBTと同性婚が容認されるまで

LGBTの問題も大争点になっている。この問題を理解するには、性的指向と性自認という概念を知る必要がある。

性的指向とは、恋愛感情や性的欲望がどこに向かうかを指す。

男性の性的指向は女性に向かい、女性の性的指向は男性に向かうと想定されがちだが、生物学的な性別と性的指向が一致するとは限らない。LGBTのうちLGBは性的指向に関する問題であり、Lとは女性同性愛者、Gとは男性同性愛者(男性同性愛者と女性同性愛者の両方を指すこともある)、Bとは男性と女性の両方が性愛の対象者となる人のことである。

性自認とは、自分の性別をどのように認識しているかという問題である。

自らの生物学的な意味での性別と異なる性自認を生きる人のことをトランスセクシュアル、他者から期待される性別の規範と異なる性自認を生きる人のことをトランスジェンダー、服装や化粧など容姿に関する「らしさ」の割り当てに抵抗する人のことをトランスヴェスタイトという。

旧約聖書の中に、ソドムという街が神の怒りに触れて焼き滅ぼされたとの記述がある。

それは、ソドムで生殖を目的とするのではない、異性間以外の性行為が行われていたためだという解釈が一般的である。

宗教右派はその記述を根拠に、神はLGBTを許容しないと主張し、同性愛行為を犯罪化するよう主張することが多い。

伝統的に軍では同性愛に対する嫌悪が強く、軍隊におけるLGBTの人々の地位をめぐる問題は大争点となってきた。

軍隊には同性愛者の雇用を禁じる規定が長らく存在していたが、ビル・クリントン大統領は1993年に「聞くな、語るな」という方針を示した。軍当局が兵士の性的指向を尋ねるのを禁止する一方で、軍内部の同性愛者も自らの性的指向を公言したり行為に及んだりしない限り除隊されないというものである。

そして、2011年にはバラク・オバマ大統領が「聞くな、語るな」の規定の撤廃を発表し、同性愛者も軍隊内部で自らの性的指向を公言することができるようになった。2015年には国防総省は性的指向を根拠とした雇用や昇進の差別を禁止すると定め、トランスジェンダーの人々にも入隊を認める決定を行った。

だが2017年、ドナルド・トランプ大統領が、トランスジェンダーの受け入れに伴う高額の医療費や混乱を引き受けられないとして、トランスジェンダーの入隊を認めない方針をツイッターで表明した。現在、米軍には数千人のトランスジェンダーがいると推定されており(調査により数字に大きなばらつきがあり、1万人を超えるという調査もある)、混乱を招いている。

LGBTの中でも同性婚を求める声は比較的強い。

連邦制を採用するアメリカでは、州政府が婚姻問題を管轄しているため、1980年代以降、州や都市のレベルでドメスティック・パートナーシップやシビル・ユニオンという名称で、異性間の婚姻と類似した権利を同性カップルに認める動きが登場した。

それに対し、同性婚反対派は、夫婦としての一組の男女間の結びつきのみを結婚とみなし、1996年、これに当てはまらないカップルには、連邦法上で夫婦に与えられる権利を認めないとする結婚防衛法を制定した。

21世紀に入ってから10年ほどの間、同性婚についての世論は反対派が6割弱、賛成派が4割弱という状況が続いていた。共和党支持者の中で反対派が強く、連邦議会を通して同性婚を認めさせるのは困難な状況にあったため、同性婚実現を目指す人々は訴訟戦術をとった。

2003年にマサチューセッツ州最高裁判所が同性婚を禁止する州法を違憲とする判決を出したのを皮切りに、ドメスティック・パートナーシップやシビル・ユニオン、さらには同性婚を合法化する判決や州法が出されるようになった。

このような動きを受けて、2010年頃から世論調査でも同性婚支持者が反対派を上回るようになった。そして、連邦最高裁判所は、2013年には結婚防衛法に違憲判決を出し、2015年には同性婚を禁じる州法に対し違憲判決(オバーゲフェル判決)を出した。この結果、アメリカでも同性婚が容認されることとなった。

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