前年比だけでなく「前年差」を出す重要性
まずお伝えしたいのは「前年比だけでなく、実数の差分である“前年差”を出す」ことの意味です。たとえば、ある企業の全国支社別の売上をまとめた表を見て、首都圏と沖縄の前年比を比べたとします。首都圏の前年比は107%、沖縄の前年比は132%でした。
首都圏の前年比107%という数字は、前年より伸びていることを示していますから、十分いい数字といえます。しかし、沖縄の132%と比べてしまうと、「沖縄のほうが首都圏よりも高い成長傾向が伺える」、「沖縄の営業マンたちのほうが首都圏の営業マンたちよりもがんばって、去年よりも高い成長を実現した」といった見解に至る可能性があります。
このとき、前年比でなく、前年との実数差を表す「前年差」という項目を設けておくと、また違った見方ができるようになります。
前年比のような伸長率を表す指標は、分母が小さいと割と大幅に増えたように見えるものです。前年差という実数差で見ることで、「首都圏と沖縄の伸長度合を比べると、沖縄のほうが優れている」と単純に考えず、「首都圏も大きな数字を積み増しており、全社における貢献度は高い」といった説明を補足できます。表を作るときに前年差という項目を設ける意味がここにあります。
数字はパーセンテージで表現するのが大切なのですが、逆に「パーセンテージは実数を伴って説明されるべき」でもあるのです。たとえば「利益率」という指標は確かに大切ですが、各企業を比較する際に利益率だけで比較するのではなく、同時に「利益額」という実数での比較をしないと正しい判断ができなくなってしまいます。これは構成比を扱うときにも重要なポイントです。
その表で何を伝えたいか? 目的を明確にして作る
「前年比と予実比を並べる」ことの意味も理解しておきましょう。
予実比とは、「実績」から「予算」(ここでは“目標”という意味)を割った比率でした。首都圏の前年比は107%で前年を上回ったものの、予実比は目標に対して86%と大幅に下回ったとします。
ここで疑うべきは、「この目標値(予算)は本当に適正な数字だったか?」、「目標値が無謀に高すぎなかったか?」ということです。
予実比を、前年比という指標と表の中で並べることで、「前年比107%という売上を作ったのに、その実績が目標値に遠く及ばないということは、その目標値の設定は高すぎたんじゃないのか?」と議論の余地が生まれるのです。
このように、Excelで表を作る際には「自分が作る表では何を言いたいのか?」、「どんな目的を持って表を作るのか?」という意思が明確に持つことが非常に大切です。
Excelは、たとえその機能や関数を100%マスターしても、それだけでは使いこなすことはできないのです。