「前向きな怠惰」で仕事はもっとラクになる――。そう語るのは、Excel業務改善コンサルタント、Excel研修講師としてこれまで300社5000人以上に「Excelを武器に人と企業が成長できるサポート」をおこなってきた、株式会社すごい改善・代表取締役の吉田拳氏。
同氏によれば、Excelの基本を知らなかったために膨大な時間のムダとミスが生まれ、生産性を大きく下げるケースが後を立たないという。
本稿では、吉田氏の著書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書【増強完全版】』より、知識不足から生まれるExcel作業のムダの多さ、効率化のために最低限知っておきたいポイントを解説した一節を紹介する。
※本稿は吉田拳著『たった1日で即戦力になるExcelの教科書【増強完全版】』(技術評論社)より一部抜粋・編集したものです。
「5時間の作業が……たった2分になりました」
「Excelのデータ処理作業に時間がかかって、それだけで半日終わってしまうんです……」
私がExcelの業務効率化をお手伝いする中で出会った、ある会社員のケースです。どうやら毎日遅い時間まで居残りしているとのこと。
なぜそんなに残業が発生するのか聞いてみると、Excelで作られている顧客名簿の電話番号数万件において、全角で入力されているものを1つ1つ半角に打ち直し、さらに電話番号のハイフンを手作業で削除していたというのです。
そのために、彼は毎日4時間の残業を3日ほど続けていました。しかしこの作業、ちょっと工夫すれば、1分もかからず完了してしまいます。
Excelの基本を知らなかったために膨大な時間のムダとミスを生み、大きく生産性を下げている例は枚挙に暇がありません。
・毎日、販売データの数値集計に2時間かかっている(2時間×20日=月間40時間)
・毎月、月末に行う交通費の精算作業に1週間かけている(8時間×5日=月間40時間)
・お客様へ提出するデータを作成するのに、毎週5時間かかっている(5時間×月4回=月間20時間)
そんな作業が、Excel作業の自動瞬殺化を行った結果、すべて月間の所要時間が3分以内に短縮されたことがあります。3つ目の事例でお手伝いした方からは
「5時間の作業が……たった2分になりました。2分って(笑)。今まで自分が5時間苦しんでいたのは何だったんだ……という思いです」
とメールをいただいたぐらいです。ちょっとした方法を知っていれば1分で済む作業なのに、何時間もの貴重な時間を単純作業に費やしているのです。
営業やコミュニケーションのスキルを上げるのも大事ですが、「それによってビジネスがどうなったのか?」という成果を計るのにExcelを使わないことはあまりありません。「数字で語れ」という本を読むのも大事ですが、その数字を出すのにあまり長い時間をかけていてはいけません。
現代の知識労働者には、Excelを使いこなすことで「作業」ではなく「仕事」をする時間を最大化する努力が必要です。Excelにもできる単純作業はExcelに任せて、人間にしかできない仕事に集中しなければなりません。
退屈な長時間の単純作業は集中力を鈍らせ、ミスを誘発し、モチベーションを下げてしまいます。