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意外に教わっていない「読点( 、)の使い方」…打つ場所ひとつで文章は別モノに!

はやみねかおる(児童書作家)

2020年04月10日 公開 2020年04月10日 更新

 

どこに読点を打つかで、文の意味が変わってくる

「でもさ、自転車に乗って本屋に行った花奈ちゃんを追いかけるのに、どうして翔は自転車を使わなかったのだ?」

「……その謎は、深い」

「そういえば、翔が花奈ちゃんに『今度、映画に行くんだけど、一緒に行かない?』って誘ったんだ。花奈ちゃんは『いいよ』って言ったそうで、翔は舞い上がってるんだけど……。ぼくは、なんかイヤな予感がするんだ」

「どうして?」
「客観的に見て、翔に誘われて、花奈ちゃんが OK するとは思えないんだ」

「たしかに、花奈ちゃんはOKしてないのかもしれないね」
「どういうことだ? 花奈ちゃんは『いいよ』って言ってるんだぜ」

「じゃあ、訊くけど─ 。健、肩こりしてないか? マッサージしてやろうか?」
「いいよ。ぼくは、若いんだぜ。肩なんか、こってないよ」

「今、健は『いいよ』って言ったよ」
「それは、『必要ない』って意味だ」

「花奈ちゃんの『いいよ』も、そっちの意味だったんじゃないのかな?」
「……」
「『いいよ』の語尾を上げるか下げるかで、意味は伝わる。でも、翔君は、花奈ちゃんと話すのに緊張して、語尾が上がってるか下がってるか気づかなかったようだね」
「文を書くというのは、難しいね。読み手が、意味をどう取るかまで考えて書かないといけないんだ」

 

 会話だとわかることも、文字で読むとわからないことがある

「最近、翔が元気ないんだ」
「花奈ちゃんと映画に行けなかったからかい?」
「そうなんだ。直接、『映画はいけません』って言われたんだって」
「ふーん」

「友達として、なんとか元気づけてやりたいんだけどさ……」 
「だったら、こう言ってやったらいいよ。『映画と違うものに誘ったら、OKしてもらえるかもしれない。頑張れ!』って─」

「どうして?  花奈ちゃんは、『映画はいけません』と言った。これは『映画は禁止されていてダメ』という意味の『いけません』かもしれない。だから、映画以外のものに誘ったらと思ったんだ」
「わかった。翔に、そう言ってみるよ!」

文の意味が相手に伝わるか、書き手は、いつも意識していないといけない。

「文は、わかりやすいといいね」これは、「わかりやすいから、いい」という意味にも、「わかりやすかったら、いいのに」という意味にも、どちらにも取れる。

「ダナイ、お腹出てるよ」
「失礼だな。『親しき仲にも礼儀あり』という言葉を知らないのか?」

「いや、ホームズの衣装の裾から、お腹が見えてるっていう意味で言ったんだ」
「そうだったのか。これは、わたしが悪かった」

「メタボで、お腹が出てるのも事実だけどね」
「……」

また、1文字でも言葉の印象が変わる。次の2つ文章の違いはなんだろう?

ぼくはコーラが好きです。
ぼくはコーラは好きです。

「コーラは好きです」と書くと、 好きな飲み物がたくさんある中の1つとして、 コーラが好きだという印象になる。

「コーラが好き」と書いた方が、より強く「好き」という気持ちが伝わる。

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