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社会

夫が「姑の味方」に見えてしまう”誤解”

黒川伊保子(感性リサーチ代表取締役社長)

2020年05月13日 公開 2022年06月30日 更新

 

ビジネストークの枕詞

とはいえ、ときには強く頭に浮かんでくるものがあるけど、自分でも何なのかはっきりわからず、テーマを切り出せないときもある。

なんだかインスピレーションが湧いて、「昨日、デパ地下でプリンを買ったら……」なんて話しているうちに、新商品のアイデアが飛び出してくるようなときだ。

そんなときは、「ちょっと気になることがあって……」と前置きするといい。

単なる雑談ではなく、気づきを生み出す会話に入ったことを知らせる便利なことばである。問題解決型の上司であっても、しばし、耳を傾けてくれる。

 

ゴールを無駄打ちさせてはいけない

報告や指示については結論から言えるけれども、言いにくい相談事は、やはり事情から話したい。そう感じる人も多いと思う。しかし、デキる上司相手に、これをするのは危険だ。

事実文脈型の相手に、結論を言わずに相談を持ちかけると、話の途中で「問題解決」の弾を打ちまくってくる。もちろん、親切心と誠意の賜物として。

事実文脈の問題解決とは、基本、相手の欠点を突くことなので、心の文脈型の人には耐えられない。だからこそ、ちゃんと最初に命題を掲げておくべきなのだ。

例を挙げよう。ある開発チームの女性リーダーの話。

――チームに不測の事態が続いた。ユーザからの要件変更が、あらぬ時期に度重なった。一つ一つは対応できないことではなかったが、総体として動きがとれなくなった。

メンバー間で流行ったインフルエンザも打撃になった。こうなったら、来月の目標を下方修正して、チームを立て直したい。それを、上司である所属長に伝えなければならない。

ところが、上司は、いちいち「こうすればよかった」「目論見が甘かった」「その対応は、ここがまずい」と女性リーダーのやり方を否定してくる。

全部自分が悪いと言われているようで、彼女はとうとう「目標の下方修正」を言い出せず、死にたい気持ちで職場に戻ったという。

上司はなぜ、気持ちをわかってくれないのだろうか。彼女は頭を抱えた。このケース、私に言わせれば、この女性リーダーが100%悪い。職場では、結論から言うのがセオリーだ。どんな場合にも、例外はない。

ところが、こんなとき、察する能力が高い共感型の人は、いきなり「目標を下方修正したい」とは言い出せない。チームがどんなに頑張ったかを先に説明しなければ、これがどんなに切羽詰まった提案かが、きっと伝わらないだろうと予想するからだ。

だから、チームに起こったひどい状況から説明したいのである。目標の下方修正を言い出すころには、上司がチームを案じ、同情していてくれると結論を切り出しやすい。もちろん、上司も共感型なら、本当にそうなる。

ところが、上司が問題解決型だと、並べ立てる「不測の事態」一つ一つに、解決策を言ってくる。脳が「目的」を探って強く動いているので、「不測の事態」を一つ言われた瞬間に、それがゴールだと早とちりし、解決策を言ってしまうのだ。

「あ、ゴール! キーック!」てな感じだ。悪気なんかさらさらない。大切な部下を育て、援護するために、すばやくそれをしているのである。このケース、上司には、なんら落ち度はない。

むしろ、デキる、思いやりのある上司だ。悪いのは、ゴールを無駄打ちさせた部下のほうである。なのに、「いちいち、私が悪いと責められて」と逆恨みするなんて、事実文脈の視点から見れば、「扱いにくい、困った部下」以外の何者でもない。

事実文脈の掟は、「目の前の人の問題点の指摘から始める(たとえ他の誰かが悪かったとしても)」である。しかしながら、これを重ねられたら、プロセス指向共感型の人は耐えられない。傷ついてボロボロになってしまうのである。

誠実な上司に、察しのいい部下。二人にはなんの落ち度もないのに、話はすれ違い、部下は「上司はわかってくれない」と絶望し、上司は「彼女には期待していたのに、残念だ」などと評価を下げてしまう。

こんな悲しいことはない。なにがあっても、「ゴール」を最初に掲げよう。

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言いにくい話には「キャッチフレーズ」をつけよう

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