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リモートでは通用しない?「個人技に頼る営業」を今すぐやめるべき理由

藤本篤志(グランド・デザインズ代表取締役)

2020年07月27日 公開 2020年07月28日 更新

テレワークの普及が進み、対面での打ち合わせも自粛が続いたことで、多くの企業が営業スタイルの変革を迫られた。従来の手法が通用しない場面が増えていく中、いま一度営業の技術を言語化し、時代の変化に合わせた手法の再構築が求められている。

成果を出す営業チームを作り上げるには、「マニュアル不要論」を捨て、ノウハウをきちんと明文化することが必要である。そう語るのは、累計17万部を突破した『御社の営業がダメな理由』(新潮新書)をはじめ多数の著作で知られる、株式会社グランド・デザインズ代表取締役の藤本篤志氏。同氏によれば、営業の世界で「マニュアル不信」は根強く、約9割の営業部がマニュアルを持っていないのが現状だという。

本稿では、藤本氏の新著『営業の問題地図~「で、どこから変える?」いつまで経っても成長しない営業マンと営業チーム 』より、「暗黙知」になりがちな営業ノウハウを明文化する時の考え方について解説した一節を紹介する。

※本稿は藤本篤志著『営業の問題地図~「で、どこから変える?」いつまで経っても成長しない営業マンと営業チーム』(技術評論社)より一部抜粋・編集したものです。

 

「営業マニュアル不要論」が根強く残っている理由

営業部の約9割が、営業マニュアルを持っていません(商材説明書は営業マニュアルではありません)。営業部には、根強く営業マニュアル不要論があるからです。それは、なぜでしょう?

答えは、アドリブの邪魔になるから、というものです。

たしかに営業という仕事は、同じ場面に二度と出くわすことがない、と考えていいほど、いろいろな応用を効かさなければなりません。しかし、営業コンサルの経験でわかることは、「アドリブができる人ほど、総じて、基礎知識が豊富」ということです。

それをひも解くカギは、「守破離」という言葉にあります。

「守」とは、かんたんに言えば、「まずは、型を覚える」ことです。型とはキホンです。

「破」とは、直接的には、「キホンを破る」ことなのですが、少しわかりにくい表現なので、一般的には「応用をする」という意味で解釈されています。重要なのは、「守」をマスターしてはじめて「破」の段階に移れる、という教えです。つまり、「キホンのマスターなくして応用なし」なのです。

そして「離」とは、「独自のものを創る」という意味です。言い換えれば、創造することです。残念ながら、この領域に達する人は少ないと言わざるをえません。

たとえるなら、「破」を音楽の世界での〝アドリブ〟だとすると、「離」は〝作曲〟になるでしょう。「アドリブがうまい人が、作曲もうまい」という関連性はありません。

このようにして見ていくと、営業マニュアルはアドリブのじゃまになるどころか、確かなアドリブを支えるキホンということになります。

・営業マニュアルがないのは、音符も読めないのに演奏しているのと同じです。
・営業マニュアルがないのは、将棋の定石も知らないのに将棋を指しているのと同じです。
・営業マニュアルがないのは、柔道で受け身も知らないのに試合に出ようとしているのと同じです。

すべて、無謀なことのたとえです。散々たる結果になることは、火を見るよりも明らかです。これほどまでに無謀なことが、営業という世界においては常識になっているところに、この問題の根深さがわかります。

また、営業マニュアルがないことは、営業マネージャーによって、教える内容が変わることも意味します。教える内容が変わってもどちらも有効な教えであればまだしも、営業マネージャーによっては、まちがったことを教えることにもなりかねません。

たとえば、いまの時代に、「夜討ち朝駆けをしてでもアタックしろ」と奨励する営業マネージャーがいたら、あっというまにブラック企業の仲間入りです。そこまで極端な例はめずらしいとしても、教える内容がデタラメな営業マネージャーのチームに配属された社員が、かわいそうです。

この問題の解決は、かんたんです。マニュアルを作ることです。

どうやってつくればいいのでしょうか?

私に依頼してください……と言いたいところですが(笑)、現実的には、よほど予算に余裕がない限り、外部に依頼するわけにもいかないでしょうから、自社内でつくる方法を説明します。

営業マニュアルは、「知識」「ノウハウ」「技術」の3本柱で構成します。

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