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育児・主婦業は「無職」ではない!!…仕事復帰を邪魔する“決めつけ”を壊す方法

大洞静枝(おおぼらしずえ:ライター)

2020年08月28日 公開 2022年08月01日 更新

 

保育料が収入を上回ってしまう苦しいケースも

復帰を躊躇するのは、キャリアブランクだけではありません。

急に働き始めることになった母親に、子どもはついてきてくれるのだろうか、長期休みの保育はどうするのか、インフルエンザなどの感染症になってしまったら仕事は休めるのか、学校の行事やイベントに参加できるのか、習い事の送迎はどうするのか。

育児と仕事の両立を考えれば考えるほど、仕事復帰というハードルが高くそびえ立ちます。

また、母親が働かなくても生活が維持できている場合、子どもとの時間を犠牲にしてまで、社会とのつながりや自分自身のやりがいを優先しても良いのかと、母親であることのプレッシャーが仕事復帰への道を妨げてしまいます。

保育料と待機児童の問題もあります。

出産後の女性がパートやアルバイトで仕事復帰する場合、十分な収入は得られません。フルタイムでない場合、認可保育園に入園できる優先順位は低くなり、一時保育や認可外保育施設、ベビーシッター、幼稚園の預かり保育を利用する必要があります。

さらに、突発的な病気の際は、病児保育を利用したり、遠方から応援に来てくれる祖父母の交通費を負担したりと、想像以上のお金がかかります。

2019年10月から幼児教育・保育の無償化が開始されていますが、対象となるのは3歳から5歳までの子どものみです。(※0歳から2歳までは、住民税非課税世帯のみ対象)。

特に、0歳から2歳までの子どもを育てる母親は、収入=保育料、または保育料が収入を上回ってしまうケースもあるのです。

また、厚生労働省の調査によると、保育園の待機児童数は16,772人(2019年4月時点)、放課後児童健全育成事業の待機児童数は18,261人(2019年5月時点)と、働く際に必要な保育の受け皿はまだまだ不十分といえます。

 

育児と主婦業という難易度の高いプロジェクトを遂行した「実績」

そこまでして、母親たちは急いでキャリアブランクを埋める必要があるのでしょうか。そもそも、ブランクと言われている期間は本当に空白期間なのでしょうか。

子育てに専念している主婦は、キャリアの空白期間を過ごしている人たち、と捉えられがちです。

しかし、実際に子育てをしてみると、「子育て」という言葉だけでは終わらない、実は多種多少なことを日々こなしており、次のキャリアに生かせることばかりなのです。

まず、育児は仕事とは異なり、常に子どもが主導権を握っています。四六時中振り回され、自分の願望や主張、休憩したいという気持ちを飲み込み子どもと過ごします。

2児の母であり、育児と主婦業に専念する林真季さん(仮名)は、「寝てくれない子どもを一晩抱っこした寝不足の日も、離乳食はお構いなく払いのけられ、宙を舞って空中分解します。

ところ構わずトイレを要望されれば、炎天下の中、時間をかけて歩いてきた道を当然のように引き返さなくてはなりません。イヤイヤ期に突入し、新しい靴が気に入らないと自転車走行中に投げ捨てられても、決してめげてはいけないのです」と子育て期間中の大変さを語ります。

子育ては、企業研修では決して得られない体験に向き合う日々の連続です。いつの間にか相当な忍耐力が鍛え上げられているのです。

加えて、家計の出納を管理する「経理」、栄養バランスを考えた食事を提供する「シェフ」、行政関係の手続きを行う「総務」や未来の社会を担う人材を育て上げる「人材育成」、子どもの習い事の送迎をする「ドライバー」、学校や地域との折衝やスケジュール管理を一手に担う「マネージャー」など、大半の主婦は家庭内でさまざまなタスクを一手に引き受け、器用にこなしています。

幼稚園や学校での役員や委員活動もあります。PTAでの広報活動や夏祭りなどのイベント企画、地域の見守りなど、活動内容は多岐にわたるのです。

これらのプロジェクトを成し遂げることのすごさは、育児と両立しながらのタイムマネジメントもさることながら、名刺がないところからスタートする高度なコミュニケーション能力にあります。仕事であれば、所属や肩書が入った名刺を渡すところからスタートしますが、母親たちは違います。

多様性が過ぎる環境で、相手の情報がないまま、周りと調和しながら業務を遂行しなければなりません。

お互い、どこの誰かがわからないまま、探り探りプロジェクトを進めるというかなり高度なコミュニケーション技術が要求されるのです。このように、地域や家庭で培ってきた子育てにまつわる業務は、多岐にわたります。

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「育児の実績」をアピールして仕事復帰した人も

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