なぜ「涙を流す」と心が癒やされるのか? がん患者と向き合い続けた医師が語るその効能
2020年09月12日 公開 2024年12月16日 更新
いつも涙は心を癒してくれる
しかし、実は、涙を流すことには、心の痛みを和らげてくれる効果があります。実際、泣いた後はリラックスする働きがある副交感神経が優位になるという科学的なデータも存在します。
世の中には意識的に泣くことでストレス解消を図る、「涙活」を行っている人もいます。「涙活」というと不思議な響きに聞こえる方もいるかもしれませんが、やっていることは実に理にかなっているのです。
悲しい映画などを見て泣いた後、すっきりとされた経験をお持ちの方も少なくないと思いますし、激しい失恋をした人から「思いっきり泣いたらすっきりした」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。
このように涙を流すという行為には、心の傷を癒やす作用があるのです。さらに言うと、涙を流す場合は、1人で泣くより、誰かの前で泣かせてもらう方が心の傷を癒やす効果が大きくなります。なぜなら心の痛みは、誰かに受け入れられたときに、最も和らぐからです。
国立精神・神経医療研究センターの堀越勝先生は、「この世に天国があるとしたら、それは安心して涙を見せられる場所だ」と言っています。
実は私自身、以前は泣くことの大切さを知らず、涙を流すことをポジティブに捉えていなかったので、患者さんが自分の目の前で泣きだすとうろたえてしまっていました。しかし、泣くことの大切さを知った今では、涙を流される様子を見ると、「ああ、この人は泣けてよかった」と思うようになりました。