予備校講師が生徒に教える「本から役に立つ情報だけを抽出する方法」
2020年10月02日 公開 2024年12月16日 更新
有名予備校で人気講師として活躍していた犬塚壮志氏は、新著『理系読書』にて、東大や医学部に合格した「できる理系」の本の読み方には、ある共通点が存在すると指摘している。
彼らは読書効率を最大化して、「質の高い情報」を得るための思考法を実践しているという。
本稿では、犬塚氏が受験を勝ち抜いた理系たちの思考を体系化した読書術を解説した『理系読書』より、読書でリターンを得るために重視すべき点について言及した一節を紹介する。
※本稿は犬塚壮志著『理系読書』(ダイヤモンド社刊)より一部抜粋・編集したものです
「読んだ冊数」が目的となっては本末転倒
「どれだけの冊数の本を読むか」を、読書の目的とする人がいるかもしれません。私も仕事柄、それなりの冊数を読んでいますが、何冊読むかは、目的にも目標にもしたことがありません。
私が重視しているのは、「1冊の本から得られる情報の質を高める」ことにつきます。これは、「量」をこなすことで高まります。「量より質」とよく言いますが、「量」と「質」の二元論ではなく、読書は「量から質」です。
本を読んでリターンを得るために重視すべきは、読むスピードでも冊数でもなく、得られる情報の質をどこまで高められるかです。
それでは、質の高い情報とはなんでしょうか? それは、得た情報で、自身の問題解決ができたかどうか。成果につながったかどうか。リターンを得られたかどうか。
特に専門書や実用書、ビジネス書など、仕事に生かすための読書では、この視点で質の高さを測っています。
それでは、具体的に質の高い情報とはどんなものでしょうか?
「使い勝手のいい情報」を積極的に入手する
質の高い情報といえるのが、「再現性と汎用性の高い情報」です。知っておけばいろいろな場面で使える、使い勝手のいい普遍的な法則のようなものです。
たとえば、有名な心理学の理論「マズローの欲求5段階説」です。
この理論によると、人間の欲求には、下から順に「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階があります。
生理的欲求とは、「お腹いっぱい食べたい」「しっかり睡眠を取りたい」など一番低次元な欲求です。そこから上にいくほど高度な欲求になっていきます。最上位の自己実現欲求とは、自分の持つ能力を最大限に発揮して、理想的な人物になりたいという欲求です。
人間は5段階のうち、低い階層の欲求が満たされると、上の階層の欲求を求めるようになります。
私は教育心理学を学んでいるときに、この5段階欲求について知り、生徒とコミュニケーションで活用することができました。
大学受験に失敗してモチベーションが低下している高卒生は、「生理的欲求」や「安全の欲求」は満たされていますが、「社会的欲求」や「承認欲求」は満たされておらず、自信を失っています。
そこで私は、彼らの存在を承認する言葉を積極的にかけるようにしました。
「君たちは負けたから予備校にいるんじゃない。自分が譲れないと思うものを自ら選ぶ勇気があったからここにいるんだ」
「大学に入ったらやりたいことって何? 自分で自分の可能性を考えられるこの時期こそが人生で最も貴重な瞬間だよ」
「勉強は個人戦だけど、受験は団体戦だ。君たちは決して一人じゃない。全員で一緒に戦おう」
そんなふうに声をかけて、彼らの社会的欲求、承認欲求を刺激することで、モチベーションを高く維持してもらうことができました。