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なぜ企業の「生産性」は上がらないのか…“生産性=効率化” という誤った認識

HRインスティテュート

2020年12月21日 公開 2023年01月05日 更新

〈アウトプットを極大化2〉組織のミッションを超えた「付加価値」を提供する

次は、付加価値の向上の観点からアウトプットの改善を考えていきます。

テレビを例に挙げると、「本源的価値」はテレビ番組を視聴することであり、これはすべてのテレビに共通する要素です。そのため、高画質である、録画ができる、スマホと連動できる等々の「付加価値」を提供し、自社製品の差別化を図っているわけです。

「付加価値」を組織に置き換えると、組織が本来求められている役割・ミッションは当然にして行った上で、それ以外に「顧客の満足度が高まる」価値を提供する取り組みを行うこと、になります。例えば、アウトプットの質を高めるための研修の実施や、プロモーション活動、新たなチャネルの開拓などによる既存商品・サービスの価値向上がこれにあたります。

この際に注意すべきことは、むやみやたらに価値を追加し過ぎないことです。価値を付加するために労働量が増えてしまえば本末転倒ですし、何より価値を判断する顧客がそれを必ずしも必要とはしていません。シニア向けの携帯電話のように、「機能を絞り込むこと」が付加価値となる場合もあります。

生産性を向上するためにも、顧客・相手目線で既存の提供価値を見直し、本当に必要とされている部分にフォーカスして、差別化を図っていくことが重要です。

 

〈インプットを改善1〉能力の高い人材を活かし「フレームワーク」をつくる

ここからは、生産性を構成するもう一つの要素である「インプット」をベースにした生産性向上について考えていきます。

インプットからアウトプットへの変換効率が変わらなければ、インプットを削減してもアウトプットが減ってしまうだけで、生産性向上とはなりません。重要となるのは、いかにしてこの変換効率を改善していくか、という観点です。

まず一つ目の方法として、この変換効率を底上げする、ということが考えられます。

同じ組織の中でも、一人ひとりの個人を見ると、変換効率には差が生じています。そこで、高い変換効率を発揮しているハイパフォーマーの思考方法や行動について分析し、それを誰もが実行可能なように言語化した上で、その他のメンバーに「フレームワーク」として取り入れてもらうようにします。

その際に重要となってくるのは、いかにハイパフォーマーの協力を引き出す環境をつくれるかです。

自分にしかできない仕事がある、ということは個人の評価につながることも多く、なかなかこれを手放さない人も多いのが現状です。彼らに対して、より魅力的でチャレンジングな業務・ポジションを用意したり、フレームワーク化を手助けするためのサポートを行ったり、といった工夫が必要不可欠です。

組織内で学び合い、変換効率を高めるためのノウハウを共有化することが、組織全体の生産性向上につながります。

 

〈インプットを改善2〉学びを実践へ繋ぎ、インプットの“質”を高める

インプットからアウトプットへの変換効率を向上させる2つ目の方法として、インプットの質を高いものに変えていく、ということが考えられます。

例えば、多くの企業では、研修や外部セミナーの受講などを通じて、ビジネススキルや最先端の業界知識といったインプットを社員に提供しています。これらにかかる費用は非常に高額となっていますが、劇的な生産性の向上につながっているかと問われたら、首を縦に振る人はさほど多くないと思います。

これは、「持ち帰り感」の薄さから来ているものです。研修やセミナーで学んだことは刺激になり、受講した本人の満足度はある程度高まる一方で、現場の業務で研修やセミナーで得た学びを使う機会がほとんどなく、次第に学びと刺激が風化していく、というのをよく目にします。

これを打破するためには、現場起点の課題意識にもとづいた、実践形式でのインプットが有効です。

現在では日本企業においてもロールプレイなどを取り入れた実践形式の研修が増えてきています。「実践であれば、現場で行えば良い」という考え方もあるかと思いますが、リスクがない状況で厳しい状況への対処方法が学べる、異なる価値観を持つメンバーの考え方に触れることで発想の幅が広がる、普段の立場よりも高い目線で物事を考えられるなど、研修ならではのメリットも数多く存在します。

このような、即効性のあるインプットを多く取り入れ、アウトプットへの変換効率を高めることも重要なポイントの一つです。

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