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「教えたつもり」の”自己満足上司”が社内で引き起こす悲劇

PHPオンライン衆知

2020年11月13日 公開 2023年01月10日 更新

「教えたのにできない」のは、100%教える人の責任

教えられる人が今までできなかったことができるようになっていなければ“教えた”とは言えないというと「教えられる側にやる気がなかったら、いくら一生懸命教えてもいい結果は出ないのではないでしょうか?」と反論されることがよくあります。

たしかに、そう思いたくなる気持ちはわかります。これまでは、教えられる人が学ばないのは本人の責任であると考えていたからです。

「まじめにやらなかったから理解できないだけだ」
「サボっていたからじゃないか」
「そもそもやる気がなかったんじゃない?」など。

あれこれ理由をつけて、すべては教えられる人に責任を押しつけてきたのです。その結果、教える人の責任は問われませんでした。ひょっとしたら、教えられる人はまじめに真剣に学んでいたのに、教える人の技術不足で学べなかったのかもしれません。

それでも、「教える人に非がある」という可能性は最初から否定されてきたのです。ところが、前述の「学習者検証の原則」をひとたび受け入れると、まったく新しい世界が開けます。

それは、教えられてもいい結果を出せないのは、教えられる側の責任ではなく教える人の責任である、という新しい見方です。教えられる人にやる気がないなら、やる気を起こさせるところから教える人の責任範囲になります。

つまり、結果が思わしくないのは教える人の技術不足のせいであり、教える人の責任は重大なのです。

 

「教えたいこと」は明確になっているか?

教えるためには、何を教えるのかがハッキリとわかっていることが必要です。これは当たり前のように思えますが、実際には教える本人もあいまいでよくわかっていないことがあります。教える人がクリアになっていないのですから、教えられる人がわかるはずがありません。

たとえば、上司が部下に「この企画書じゃ、ダメだよ」と言うことがあります。しかし、部下には、その企画書のどこがダメなのかがわかりません。

企画そのものが良くないのか、企画書の書式が整っていないことが悪いのか、それとも、企画は良いけれども、その説明の仕方がダメなのか。企画書のどこを直せば良くなるのかが伝わっていないのです。

教えるということはコミュニケーションのひとつですから、いったい何をどうすればいいのかが伝わらなければ、うまく教えることもできません。

そこでまず、あなたが教えること、すなわち、相手にできるようになってほしい具体的なことをハッキリ決めましょう。これを「ゴール」と言います。

あなたが教えたいゴールはどのようなことなのか。そのゴールを教える相手に具体的に伝え、教えられる人がそのゴールを誰の助けもなく一人でできるようになったときに、あなたは初めて「教えた」と、胸を張って言うことができるのです。

 

変えるのは相手の心ではなく「行動」

教えるためにはゴールを決めることが大切ということはおわかりいただけたと思いますが、どんなゴールでもかまわないのでしょうか?

たとえば、「もっと素直な人になってほしい」「人を思いやる気持ちを持ってほしい」「ポジティブ思考を身につけてほしい」などといった相手への願望も、教えるためのゴールになるのでしょうか?

答えは「×」です。「もっと素直な人になってほしい」といった相手への願望は持っていてもかまいませんが、教える技術では、他人の心まで変えることはできません。だからダメなのです。

気持ちを変えられるのは自分だけです。自分が変えようと決心したときに、自分の気持ちが変わります。逆に、相手の気持ちを変えようとすると、相手はかたくなになってしまい、よけいに変わらなくなることもよくあります。

上手に教えるためには、相手の「心」を変えるのではなく、「行動」を変えるのです。つまり、その人が今までできなかった行動をできるように変えることが、「教えた」ということになるのです。そのためには、ゴールが「行動」となるように言い換えます。

「素直な人になってほしい」→「すぐに『ありがとう』と言える」
「人を思いやる気持ちを持ってほしい」→「電車にお年寄りが乗ってきたら、席を譲る」

例えばこれなら、何ができるようになれば「学んだ」と言えるのかが明確になりますね。

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