“Amazon産” 牛乳、苺、メロンの誕生!?…EC最大手が今度は「農業」に進出する可能性
2020年12月07日 公開 2024年12月16日 更新
小売りのみならず、金融、モビリティーなど業界を軽々と超えてビジネスを広げるアマゾン。
そんなアマゾンが次に目論んでいるのは、農業への参入だとベンチャーキャピタリスト山本康正氏は指摘する。
アマゾン牛乳、アマゾン苺、アマゾンメロンなど、アマゾンのプライベートブランドによる農業が今後誕生する可能性は十分に考えられます――新著『2025年を制覇する破壊的企業』を上梓した同氏はいう。どういうことなのか。語ってもらった。
※本稿は、山本康正(著)『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)より、内容を一部抜粋・編集してものです。
東京の20階建てビルで高級野菜が育つ!?
農業はこれまで、田舎の広大な土地で行うのが一般的でした。しかしそのような様相が、 2025年の未来には変わっているかもしれません。農業のトレンドは、消費者に近い都会で行う流れにあるからです。
実現すれば、運送コストは大幅に下がりますし、フレッシュな食材が手に入るようになります。特にハイブランドで希少価値の高い農作物の生産が注目されています。
逆の言い方をすれば、地方の農家は、廉価で大量消費される農作物を大規模生産する。このように二分化されることも考えられます。
アメリカでまさに私が思い描く未来を実現している事例があるので、紹介します。 Oishii Berry (オイシイベリー)という、ニューヨークの近くにある企業です。
同社では7〜8糖度の苺が一般的なのに対し、平均で 15 糖度前後。中には 20 糖度を超える極上品の苺、まさに社名にふさわしいおいしい苺を栽培し ています。
その苺を生産している場所が、なんとニューヨ ークの隣、ニュージャージー州にある自社のオフィス内です。言うなれば、苺の植物工場です。ニューヨークではなかなかおいしい苺が手に入りづらいとの課題が以前からあり、同社が生産した苺は、高値で取引されています。
この流れが、日本にも来るのではと私は考えています。たとえば東京のど真ん中に20 階建ての農産物生産専用のビルを建て、苺のような高級食材を生産するのです。
収穫された品は、近くの高級料理屋や高級スーパーに卸される。オイシイベリーの経営者はUCバークレー卒業の日本人ですから、可能性は十分あると思います。
農業でも自動化ならびにデータ活用が進んでいて、ソフトウェアや人工知能といった業界からの参入が見られます。
現在の農業では、種まき、草むしり、肥料配布、収穫といった多くの作業において、農家の方々のノウハウを元に行われています。この属人的だった作業が、データ化、効率化していきます。
自動化においてはドローンが農薬の散布や水撒きで活躍します。ドローンに人工知能を搭載すれば、人を介することなく自動で働いてくれますから、コストダウンはさらに高まります。得たデータを分析することで、より効率的な収穫も行えるようになります。
アマゾンは、どの地域でどのような食材のニーズがあるのかを知っている
GAFAの農業参入においては、アマゾンが最有力候補だと見ています。アマゾンは独自のブランドアマゾンベーシックを持っていますから、そのラインナップに農作物を加えることが、十分考えられるからです。いわゆるプライベートブランドです。
アマゾン牛乳、アマゾン苺、アマゾンメロンなど。実際は農家との協業かもしれません。GAFAが農業に固執している小さな農業法人を囲い込むことは、十分あり得ます。
アマゾンはホールフーズ・マーケットという、高級食料品を扱うスーパーマーケットチェーンを2017年に買収しました。つまりどの地域でどのような食材のニーズがあるのかを、把握しています。
メロンの需要が高いエリアには、先の苺生産工場のようなかたちで、メロンだけを作る。そのような戦略が描けます。
もう一つ、農業の未来でユニークな取り組みをしている企業がコマツです。正確には林業ですが、コマツは山で木を伐採した瞬間に、伐採機に搭載されたカメラで木の状態をスキャン、その情報をクラウドに素早くアップ。
データ解析し、マーケットでどれほどの値段がつくのか瞬時に分かるシステムを開発し、実際に活用しています。つまり、木を切った瞬間に価格がつくわけです。
おそらく農業などの一次産業は、これが究極の未来のかたちの一つだと私は考えています。
たとえば漁業。魚を釣った瞬間に、船に搭載されているカメラなどで解析し、値段がその場で分かるようになります。このような未来が実現すれば、これまで築地などの市場で目利きの仲買人などが行っていた値付けを、ソフトウェア、人工知能が代わりに行えるようになります。
さらには収穫してからしばらく経った生産物の鮮度なども、自動で明示してくれるようになるでしょう。その結果、生産者から消費者もしくは小売業者へのダイレクトな流れが、すでに進みつつありますが、加速します。