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すべての企業が無視できなくなった「ESG問題」…稼ぐだけの企業が脱落する

泉貴嗣(CSRエバンジェリスト)

2021年02月02日 公開 2024年12月16日 更新

いまや広く知られた考え方であるSDGs。利益を追求し自社の経済的価値を高めていく。そんな企業のあり方に、早急な変化が求められている。

CSR(企業の社会的責任)エバンジェリストの泉貴嗣氏は、新著『やるべきことがすぐわかる! SDGs実践入門~中小企業経営者&担当者が知っておくべき85の原則』(技術評論社)の中で、SDGsの具体的な実践方法やよくある誤解について解説している。

本稿では同書より、「どれだけ稼ぐか」から「どのように稼ぐか」が重要になる時代に、企業が取り残されないためのポイントについて語った一節を紹介する。

 

「どれだけ稼ぐか」ではなく「どのように稼ぐか」

これまで企業は法令で規制されるか社会が注目しない限り、ESG問題(ビジネスの制約要因となる、自然災害を含む環境問題(Environment)、社会問題(Social)、組織統治問題(Governance)の頭文字を取って総称したもの)に配慮することなく、自社の経済的価値を追求してきました。

これは「どれだけ稼ぐか」だけが企業の評価基準であったことを意味しています。

その結果としてもたらされたのが、企業と社会の持続可能性を脅かす無数のESG問題です。「どれだけ稼ぐか」を基準にした企業の行動が、「稼ぐための環境」そのものを危うくしているのです。

ESG問題が深刻化する時代では、社会が企業に求める評価基準が変わります。これからの評価基準は、「どれだけ稼ぐか」ではなく「どのように稼ぐか」です。「どのように稼ぐか」とは、「企業がESG問題の抑制/解決によって経済的、社会的価値を創造できているかどうか」という評価基準です。

それは、SDGsの取り組みをどれだけ体系化できているかが、これからの企業の評価基準となることを意味しています。

CSR調達(CSR:Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任。取引先を選ぶ際の基準として価格や機能だけでなく、このCSRの状況も評価に含める調達方法のこと)やソーシャルビジネス、エシカル消費などの登場は評価基準の移り変わりを示すものと言えます。

これからはどれだけ稼ぐ企業であっても、それがESG問題を生み出す企業であれば、社会の持続可能性を脅かす存在として厳しい社会的制裁を受けることになります。

例えば好業績の企業でもサプライヤー企業の環境汚染や人権侵害を放置したことによって、NGOなどから発注者としての説明責任を問われたり、不買運動に遭ったりするケースがあります。これは企業に求められる新しい評価基準を逸脱しているからです。

もはや企業が「どれだけ稼ぐか」を誇る時代は終わりました。これからの自社の生存戦略では「どのように稼ぐか」がカギとなることを、しっかりと自覚する必要があります。

 

ビジネスの成長を脅かす「ESG問題」

ESG問題は、ビジネスの持続を脅かす問題であるとともに、わたしたちが暮らす社会の持続可能性を脅かす問題でもあります。ESG問題は、ビジネスと社会の両面で、SDGsの目標「持続可能な世界の実現」と密接に関わっているのです。

自然災害や資源の枯渇をはじめとする環境問題(E)は、事業拠点の被災や資源価格の高騰といった形でビジネスの成長を脅かします。

貧困や少子化をはじめとする社会問題(S)は、顧客の購買力低下や市場の縮小といった形でビジネスの成長を脅かします。

違法なサービス残業や不正会計をはじめとする組織統治問題(G)は、法的規制の強化といった形で企業の自由を狭め、ビジネスの成長を脅かします。

経済活動のグローバル化に伴い、ESG問題の種類とバリエーションは増加しています。それは、ビジネスの成長を阻害する要因が増えていることを意味します。

ESG問題には、自然災害のように「認識しやすい問題」だけでなく、貧困のように「認識し難い問題」も含まれます。成長とリスクの低減を両立させるためにも、企業にはこれらのESG問題がビジネスに与える影響をリサーチし、「具体的な対策」をとることが求められています。

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企業が「ESG問題」に対処するためのカギ

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