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すべての企業が無視できなくなった「ESG問題」…稼ぐだけの企業が脱落する

泉貴嗣(CSRエバンジェリスト)

2021年02月02日 公開 2022年10月20日 更新

企業が「ESG問題」に対処するためのカギ

SDGsを実践する上で、企業はESG問題に対してどのようなアプローチを行うべきなのでしょうか?

1つのESG問題は、他のESG問題と密接に関わっています。例えば社内のESG問題であるパワーハラスメントを予防するために、研修を行ったとします。

しかしスタッフが少ないために過重労働というESG問題が常態化し、スタッフが恒常的にストレスを抱えた状態であれば、いくらパワーハラスメント予防の研修を行ったとしても、パワーハラスメントを誘発しやすい環境は改善されません。

1つの問題だけに取り組んでも、ESG問題に対する効果は期待できないのです。SDGsでは持続的な世界を目指すための17の目標が設定されていますが、目標間に「相互連関性」のある実践によるメリット(マルチベネフィット)が求められています。

例えば人材難という経営課題があったとします。そこで人材難の解消のため経済的に弱い立場にあるシングルマザーを採用し、同時に彼女たちの労働環境に配慮して企業内保育所を開設します。

するとSDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の実現が、目標1「貧困をなくそう」と目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に貢献し、相互連関するマルチベネフィットとなります。

これは既存事業の課題解決としてESG問題に取り込み、その実効性の確保のために新規事業を立ち上げる「一石多鳥」的な取り組みと言えます。また、SDGsの取り組みが自社単独では難しいと判断し、他の企業との間でパートナーシップを組んだとします。

すると、その取り組みはSDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の実践につながります。

ESG問題は複数の問題が複雑に絡み合っているため、1つの取り組みだけでは奏功し難いという特徴があります。SDGsの実践は、マルチベネフィットにつながる取り組みと、社外とのパートナーシップを視野に入れる柔軟性がカギになります。

 

SDGsで「先行者利益」を生み出すために

SDGsに取り組むメリットを享受するには、ビジネスのさまざまな局面でバランスよくESG問題の抑制/解決に取り組む必要があります。それには、SDGsの取り組みの体系化が欠かせません。

そして、取り組みの体系化は何よりも早期に取り組むことが重要です。なぜなら、いち早い体系化こそが「先行者利益」をもたらすからです。

全社的にSDGsを学習するとともに合意形成を図る。見直した企業理念に裏打ちされた将来像を描き、そのための方法論を経営計画の中に位置付ける。ESG問題の戦略的な抑制/解決に取り組み、その実績を見せる化する。

体系化に必要なこれら一連の取り組みは、一朝一夕で実現するものではありません。また、これらはカネの力で人材を集めたり、専門家を雇ったり、新しい機械を導入すれば直ちに実現するというものでもありません。

だからこそいち早くその地域、その業界でSDGsの取り組みの体系化を実現できれば、それは非常に大きな企業価値として、顧客や将来の従業員などのさまざまなステークホルダーの支持につながり、本当の「競争優位性」を生み出します。

反対に、他社の成功事例を見てからSDGsへの取り組みの体系化を始めても、実現までに多くの時間とコストを要します。その間に他社は先行者利益をバネにしてさらにSDGsの取り組みを発展させ、自社との差を一層広げていきます。

体系化による先行者利益を後発企業が追い越すことは、非常に困難です。だからこそ、他社に先んじた体系化に着手することが、自社の生存戦略として非常に重要になるのです。

 

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