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生き方

やりたいことが無いのは罪なのか? 就活生を苦しめる「夢や目標」の強要

鈴木裕介(内科医/心療内科医/産業医)

2021年04月30日 公開 2024年12月16日 更新

「人生ハードモード」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。

これは生まれた環境や置かれた状況によって、自分の意志とは関係なく数々の困難が襲いかかってくることを意味するゲーム由来のインターネットスラングである。近年言われるようになった「生きづらさ」とも類似の概念だ。

秋葉原でクリニックを営む鈴木裕介氏は、著書『メンタルクエスト』(大和出版)にて、"ハードモードな人生を抜け出すヒント"をゲームのクエスト(冒険)になぞらえて解説している。

本稿では同書のコラムにて、「やりたいことが見つからない就活生」の悩み相談に、鈴木氏が回答した一説を紹介する。

※本稿は、鈴木裕介 著『メンタルクエスト』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「夢や目標」が無いことは罪なのか?

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「就活中の大学4年ですが、就職先が決まりません。好きなことややりたいことは何ってよく聞かれるんですけど、思い浮かばなくて。内定をもらった友人と比べて自分は意思がない人間なんだと、余計落ち込みます」
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他者に夢や目標についての説明を過度に求める人のことを、僕は「やりたいことヤクザ」と呼んでいます。

「夢や目標は何?」「どんなことを成し遂げたい?」……こんなふうに執拗に問いかける「やりたいことヤクザ」は 「大きな目標や夢を掲げるのがいいことだ」という価値観を一方的に振りかざしているにすぎないんです。

私たちは誰かにとって「わかりやすい人生」を送るために生きているわけではありません。それより 「自分にとって納得がいく、幸福度の高い人生を送ること」こそが重要なはず。

「実家の犬に毎週会いに行きたいから、出張や転勤がない仕事に就きたい」
「朝早く起きたくないから、家から近い会社で働きたい」

他者からはちっぽけな理由に見えても、あなたの人生の幸福度が向上するのだとしたら、これらも立派な人生の軸だと僕は思います。

まずは自分の気持ちに正直になって、「こんな時に自分は心地よいと感じるな」「こんな生活だったら幸せだな」という、小さな幸せを見つけてみてほしいと思います。それが、自分なりの幸せな人生を歩むうえでの道しるべとなってくれるはずです。

最近の日本では、「わかりやすい大きな目標や夢を掲げるのがいいことだ」という風潮が強くなっているように感じます。でも、これは最近になって社会で「よし」とされるようになった一つの価値観でしかありません。

社会が要請する「人生像」に自らを合わせていく必要はまったくない。あなたが自分で歩みたいと思う人生はどんなものなのか、まずはそれを考えてみてほしいと思います。

 

好奇心への初速を上げよう

では、自分なりのやりたいことを見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。

僕の友人であるプロジェクトプロデューサーの吉田将英さんがこう言っていました。

「何も足を踏み出していない状態で、それが『やりたいかどうか』を判断するのは難しい。『やりたいこと』は常に『やったことがあること』の近くにある」

つまり、やったことがないとやりたいかどうかなんてわからない。だからまずは一歩目を踏み出してみることが大切なのだ、ということですね。そのために吉田さんは、「好奇心への初速を上げる」ことも提唱しています。

「とりあえずカードがあったら、好奇心にブレーキをかけずめくってみる。そうすると、一歩を踏み出せる」

「自分は何をやりたいんだろう」と禅問答をしていても、思考はなかなか進みません。まずは「やりたいこと」と深く考えずに、少しでも心が動いたら、ちょっと試してみる。

一回でやめてもいいし、「全然面白くなかった」と感じてもいいでしょう。好奇心にブレーキをかけず、何かに軽くチャレンジしてみたら、「意外と面白かったな」と感じることがあると思います。

そしたら、「またやってみるか」くらいの気持ちでいいんです。その積み重ねが「やりたいこと」につながっていくと僕は思っています。

 

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