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社会

研究から見えてきた…履歴書の「性別」が生む”無意識の偏見”

パク・スックチャ(株式会社アパショナータ代表、コンサルタント)

2021年05月11日 公開 2022年02月01日 更新

米国を中心に、長年研究が進められてきた「アンコンシャス・バイアス」。"男性だから稼ぐべき"、"外国人は自己主張が強い" など、私たちに無意識の内にインプットされた「偏見」を意味する。

偏見は良識的な人でも持っており、それ自体は悪いことではない。しかし事実に基づかずに、評価や意思決定に何らかの影響を及ぼす側面もある。コンサルタントで"バイアス"問題に詳しいパク・スックチャ氏は、その問題点を指摘する。

パク氏は著書『アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か』にて、各国の研究結果を例に偏見の実情を解説している。この問題は人々の生き方をいかに左右してきたのか。

※本稿は、パク・スックチャ 著『アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見―とは何か』(インプレス社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは何か

「アンコンシャス・バイアス」とはなんでしょうか。

日本ではまだそれほど馴染みがない言葉かもしれません。直訳すると、

アンコンシャス=無意識な
バイアス=偏向、偏見

ですので、日本語では「無意識の偏見」と翻訳されることが多いです。

では「無意識の偏見」とはなんでしょうか?

無意識=自分が自分の行為に気づかないこと
偏見=偏った見方・考え方。ある集団や個人に対して、十分な根拠なしにもつ偏った判断や意見等

なんとなくイメージできてきたでしょうか。具体的には、以下のように自身が思っていたり、他人から言われたことはありませんか?

「男だから家族を養うべきだ」
「女のくせに出しゃばりだ」
「最近の若者は忍耐力がない」
「高齢者は頑固だ」
「外国人は自己主張が強い」

「男」「女」「若者」「高齢者」「外国人」といった特定の属性や集団、対象に対して、十分な根拠なしにもつ偏った判断や意見が、バイアス(偏見)です。

バイアス(偏見)の対象は人だけに限らず、例えば

「日本製は質が高い」
「新興国は治安が悪い」

などもバイアス(偏見)です。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)は、その名の通り、自分自身が気づかずに(無意識に)もっている偏った見方や考え方(偏見)のことです。

これは同時に、無意識的に生じる「瞬間的、自動的連想」とも言えます。

一般的に人は、自分には良識があり、物事を客観的に判断できていて、「偏見はもっていない」と思っています。しかし数多くの研究により、「人間はみな偏見をもっている」ことがわかりました。心優しい人も優秀な人ももっているのです。

バイアス(偏見)には機能があるため、偏見をもつこと自体は悪いことではありません。

しかし、十分な事実にもとづいていないため、しばしば意思決定や評価に歪みを与え、間違った判断をしてしまいます。それが問題なのです。

 

大量の情報を処理するための「偏見」

では人はなぜ偏見をもつのか。それは、脳がそうさせるからです。人の脳は、情報処理をするとき、無意識と意識の2種類の思考パターンで対応しています。

無意識の思考パターンは、受動的、自動的、直感的で、判断の質が弱点ですが、スピードが速いというメリットがあります。これに対して、意識の思考パターンは、スピードが遅い弱点がありますが、能動的、論理的、分析的という強みがあります。

私たちは絶えず迅速な判断を求められる一方で、情報の量は無限大です。そのようななか、あらゆることを客観的に分析して判断を下すことはできません。

また、脳科学の進展により、人の脳が意識的に対応できるのはわずか1%ほどで、99%の情報は無意識的に処理されていることも明らかになっています。

このような状況で大量の情報を素早く効率よく処理するために、過去の知識や経験をもとにした「近道」を使います。この近道が「偏見」なのです。

ただし、スピードと効率の代償として「正確さ」が失われ、しばしば不正確な判断を下してしまうのです。そして、無意識であるがため、自分の意思決定や行動に偏見があると気がついていません。

しかしこの機能を使わなければ、無限大の情報が溢れる社会に対応することはできませんから、完全に排除すればいいというものではありません。どういう状況でバイアス(偏見)に委ねてよいのか、どういう状況では「無意識」を「意識して」判断するべきなのか、考える必要があるのです。

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同内容の履歴書で「性別」による評価の例

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